こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

おまえうまそうだな

otello2010-09-09

おまえうまそうだな

ポイント ★★*
監督 藤森雅也
出演
ナンバー 202
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


まわりの仲間や家族とは見かけが異なっている。そんな己の正体が周囲の天敵だと知ったとき、どうすべきか。弱いものを食べる、その本能を抑えきれなくなるのを恐れて一人で生きる決意をした若い肉食恐竜の成長を通じて、心を通わせれば外見の違いなど関係なく理解しあえると映画は訴える。幼児向け絵本のアニメ化のこの作品、大人が見るといちいち物語から何らかのメッセージを受け取ろうとしてしまうが、子供たちはもっと直感的な部分で何かを感じ取るはず。それを知りたいと思っても、もう純粋でなくなってしまった精神では無理だろうが。。。


草食恐竜のお母さんが川で拾った卵から生まれたのは青い赤ちゃんだったが、彼女はわが子として育てる。ハートと呼ばれるその子は、草葉や木の実が嫌いで動物にばかり興味を抱く。やがてハートは肉食恐竜の子供だとわかり、群を追放される。


ハートは一人になった直後に草食恐竜の赤ちゃんと出会い、父親と間違われる。ウマソウと名付けたその子と旅を続けるうちに、親としての愛情が芽生える。食われるかもしれないのに身の危険を顧みず愛してくれた母の姿を思い出し、自らもウマソウへの食欲を抑制して父親らしく振る舞おうとする。一方でウマソウはハートのような恐竜になりたいと願っている。理想と信じていることがまったく逆の結果を導くという運命の皮肉。肉を食らう自分を“今のおれを母に見られるのが怖い”とつぶやくハートの気持ちが切なく悲しい。


◆以下 結末に触れています◆


その後火山が噴火し、ジャングルが火山灰に覆われたために草食恐竜たちは避難を始める。そんな中、ハートは母を探す。恐ろしい肉食恐竜となってもハートに対する母の態度は変わらないばかりか、ハートを倒そうとするバクーという肉食恐竜のボスの前に身体を投げ出してハートの命乞いまでする。わが子と信じたハートへの愚直なまでの一途な母の愛が、素朴な手書き風の絵からあふれ出していた。