こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

エクスペンダブルズ

otello2010-09-11

エクスペンダブルズ THE EXPENDABLES


ポイント ★★★
監督 シルヴェスター・スタローン
出演 シルヴェスター・スタローン/ジェイスン・ステイサム/ジェット・リー/ミッキー・ローク/ドルフ・ラングレン
ナンバー 214
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


隆々と盛り上がった三角筋、翼を広げたような広背筋、鍛え上げた鋼のごとき大胸筋。60歳を過ぎてなお成長しようとするスタローンのあくなき肉体礼賛はここでも色濃く影を落とし、肥大した上半身の筋肉は彼が自らに課した鍛錬と節制に厳しさを見事に物語る。一方で全力疾走するシーンでは足がバタついたりと、寄る歳波を隠しきれないのもご愛敬。それでも、“男は常に強くあれ”という30年以上にわたって譲らないポリシーはむしろすがすがしく、見る者の心に届く。世の中の価値観はどんどん変わっていく、その中で変わらないものがあってもいいと思わせるほどの熱演だった。


傭兵部隊・エクスペンダブルズのリーダー・バーニーはヴィレーナ島の独裁者・ガルザ将軍の暗殺を依頼される。あまりの守備の堅さに一度は断ろうとするが、下調べ中に知り合ったガイドのサンドラの熱意に応えるために、4人のスペシャリスト共に島に戻っていく。


ベルリンの壁崩壊以降の映画にありがちだが、この作品でも倒すべき“悪”の定義が揺らいでいる。ガルサ将軍はCIAを裏切った工作員のパシリに甘んじている上、サンドラはガルサの実の娘という込み入った人物相関図。さらに父娘関係を浮き上がらせて、真の悪党はほかならぬ米国人だったという構図を設定している。悪が悪であり正義が正義であった時代は遠い昔、だからこそ信じられるのは己自身と命がけで戦場を駆け回った男同士の友情と信頼。破壊と殺りくを繰り返す大味な映画だったが、B級感あふれる割り切りがかえって新鮮に映る。


◆以下 結末に触れています◆


ただ、名だたるアクションスターの中で身体能力が鈍っていなかったのはジェイソン・ステイサムのみ。抜群のスピードでナイフを操り圧倒的な存在感を見せる。他方、ジェット・リードルフ・ラングレンは、全盛期ははるか昔の感すらある。だが、ワイヤーやCGでごまかそうとはせず、彼らの衰えもまた時の流れを感じさせてくれて楽しめる。あくまでスタローンが主張したいのは、トレーニングはウソをつかないということなのだ。