こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

クレイジーズ

otello2010-11-15

クレイジーズ THE CRAZIES


ポイント ★★
監督 ブレック・アイズナー
出演 ティモシー・オリファント/ラダ・ミッチェル/ジョー・アンダーソン/ダニエル・パナベイカー
ナンバー 273
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


電話もネットもケータイも通じない、幹線道路はすべて通行禁止にされている。大平原にポツンと取り残された小さな町で起きた細菌感染、軍によって封鎖された上、情報も人の流れも遮断される恐怖。何が正しくて誰が敵なのか、ゾンビ化した住民に襲われそうになりながら圧倒的装備を持つ軍から追われている。そして真実を知ってしまった主人公たちは、絶望と戦いながら逃亡を続ける。映画は思考を失った感染者と隠ぺいしようとする当局の板ばさみの極限状態の中で、勇気と理性、行動力を試していく。


陸の孤島のような町の保安官・デヴィッドは野球の試合中、ショットガンを手にグランドに乱入してきた男を射殺する。彼の妻で医師のジュディの診察を受けた男は、その夜妻子を焼き殺す。調査を進めると、町の水源地に軍用機が墜落、水を飲んだ者が異常をきたしていることが分かる。


直後、デヴィッドとジュディは軍に拘束され隔離施設に収容されるが、暴動に乗じてデヴィッドはジュディを救出、さらに保安官助手のランディ、医療助手のベッカと合流して脱出の手段を探す。その過程でゾンビ化した顔見知りをデヴィッドはあっさり殺してしまうが、このあたりの彼のキャラクターの単純さが物語の底を浅くしている。冒頭に感染者を死なせたときはあれほど苦悩していたのに、感染が広がるともはや躊躇なく引き金を引く。感染者の中に彼の両親がいたとか、ジュディも汚染水を口にしたとか、身内が感染した場合に彼の良心がどんな行動をとらせるかを見てみたかった。


◆以下 結末に触れています◆


一方で、潜伏期間で徐々に心が蝕まれつつあるランディは自ら囮になってデヴィッドたちを救おうとする。自己犠牲の崇高な精神、ゾンビとして破壊されるより誇りある人間として死にたいという彼の願いを描くシーンは素晴らしい。ただ、全体的に映像が暗く、昼間の太陽の下の場面でも遮光フィルムを通して見ているよう。なんでこんなプリントを上映したのか不思議で仕方ない。