酔っぱらって羽目を外していただけなのに。悪ふざけがちょっと行きすぎただけなのに。彼は大量の血を流して意識を失った。救急車を呼ぶといろいろと詮索され面倒なになる。物語は、重傷を負った友人を見捨てた男が真実から逃げ回る姿を描く。最初についた小さな嘘が破たんしそうになるとまた別の嘘で上塗りする。一方で、凶悪な犯罪など起こらないと信じている田舎町の住人は、彼の話に納得はしなくてもしつこく疑ったりはしない。だが、幼い娘の口から出るストレートな言葉が彼を追い詰めていく。思い付きの偽装工作もかえって警察に関心を持たれてしまう。なんとか逃れようとその場しのぎの出まかせを重ね、結局己の立場を悪くしていく彼の対応は、深く考えない人間の愚かさが凝縮されていた。
バンド練習の後、大騒ぎしていると、ディックが危篤状態になる。ジークとアールはディックを病院に置き去りにしてそのまま帰宅するが、ディックは死亡、ジークのクルマには血痕が残っていた。
妻から娘の送りを頼まれたジークは、アールに娘を送らせ、自分のクルマは盗まれたことにする。ところが娘はディックの財布をジークが持っていたと保安官に証言、朝にジークのクルマに乗ったとも言う。さらに、クルマを沈めようとした池の水深が足りなかったり、娘に卑猥語の意味を何度も聞かれたりと、本人たちが真剣になるほど予期せぬ結果が生まれるという皮肉が、乾いた笑いを誘う。その上、ディックを検視した医師が、衝撃的な死因を報告する。ジークとアールが頑なにかかわりを隠し続けようとした動機が、自らの保身のみならずディックの名誉を守ろうとしていたとうかがえるあたり、彼らも根は善人なのだ。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
妻にばれたジークは、保安官の取り調べ時のごまかしには協力してもらえたが、家を追い出され、町を離れようとしていたアールと合流する。それでも、愛馬を忘れられず自宅厩舎に戻ったジーク。真相が知れると殺処分される、その運命から愛馬を救おうとするジークのやがさしさ印象的だった。
監督 ダニエル・シャイナート
出演 マイケル・アボット・ジュニア/ヴァージニア・ニューコム/アンドレ・ハイランド/ダニエル・シャイナート/サラ・ベイカー/ジェス・ワイクスラー
ナンバー 130
オススメ度 ★★★