こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

シャンハイ

otello2011-08-19

シャンハイ SHANGHAI

ポイント ★★
監督 ミカエル・ハフストーム
出演 ジョン・キューザック/コン・リー/チョウ・ユンファ/菊地凛子/渡辺謙
ナンバー 125
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


愛した者に裏切られ、信じた者に見捨てられる。国家という途方もない重責を背負う人間にとって個人の感情や感傷など取るに足らず、戦争の大きなうねりの中で愛だけが真実と思いこもうとしても、うたかたのごとく弾けてしまう。太平洋戦争勃発前夜、租界を支配下に置く列強が鎬を削り、日米の微妙な緊張と中国人レジスタンスによるテロが日常茶飯事だった上海。お互いに素性を明かせない男と女が出会い、運命を共にする。映画は、米国の諜報員が殺された前任者の足跡を追う過程で、日本軍の最高機密に迫りつつも許されない恋に落ちる姿を描く。


他殺体で見つかった親友の任務を引き継いだポールは、カジノで同席した中国人女とドイツ領事館のパーティで再会する。彼女は地元マフィアのボスの妻・アンナといい、反日運動家の支援者だった。一方、日本軍将校・タナカと謎の女・スミコとの関係が浮かび上がってくる。


ヨーロッパはナチスドイツが席巻し、日中間も激戦の真っただ中。だが、上海は外界の戦乱がウソのように日夜絢爛たる魔都の顔を見せる。米国と日独はいまだ直接の干戈を交えていないので、ポールは独外交官の妻やタナカとも比較的制約なしに会える。中国でありながら中国ではなく、外国人が混在しながら暗黙のルールが出来上がっている、舞台となった上海の街は、「第三の男」におけるウィーンのような猥雑な雰囲気を醸し出す。ところが、そのあたりの虚々実々の駆け引きが見どころのはずなのに、なかなか物語は前に進まない。


◆以下 結末に触れています◆


ポールが運営していた日本人情報屋は恋人に密告され、タナカもまたスミコが米スパイの情婦だったことに気づく。ポールは、自分が関わった男たちが信を置いた女が二股かけていた事実を知りながら、それでもアンナを信じようとする。どうせならポールにも、アンナから手酷い仕打ちを受けて命を危険にさらすくらいの地獄を味あわせていれば、大義に生きる人間の前では愛は幻想であると訴えられたのだが。。。