こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

再会の食卓

otello2011-02-07

再会の食卓 団圓

ポイント ★★★*
監督 ワン・チュアンアン
出演 リン・フォン/リサ・ルー/シュー・ツァイゲン/モニカ・モー
ナンバー 31
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


たった一年連れ添った男と数十年ぶりに再会した女。残り少ない余生の中でもう一度愛を確かめ合おうとするが、彼女には大勢の家族がいる。ところが、子供たちの態度とは裏腹に年老いた夫は彼女が家を出のに賛成する。映画は中国と台湾に分断されたひと組のカップルが数日を過ごし、過去を見つめなおしていく過程で、人と人の関わり合いの中での複雑で繊細な心情をすくい取っていく。正式に離婚するためだけに結婚証明書を取ろうとする老夫婦の姿が滑稽で、彼らの幸せそうな婚礼写真の笑顔が強烈なペーソスを誘う。


中台離散家族交流で上海を訪れた元国民党軍兵士・イェンションは、元妻のユィアーとその一族の歓迎を受ける。そんな中、イェンションはユィアーに台湾に行こうと誘い、ユィアーの夫・ルーも怒るそぶりを見せず彼女の気持ちを尊重すると言う。


大きな食卓を囲んで遠来の客をもてなす。中国人の、人間関係を大切にする習慣は、強固な血縁の結びつきのみならず、国共内戦の末に失われた時間の長さを思い出させる。国民党軍撤退の日に一緒に逃げようとして波止場で落ち会えなかったイェンションとユィアー、埋め合わせをするには長すぎる空白にはすでに夫と子供という別の人生が入り込んでいる。それでも、ユィアーは「家族のために自分を犠牲にしてきた」と台湾行の意思を曲げない。本来、面子丸つぶれのはずのルーが酔いつぶれて本音を漏らすシーンに、彼もまた政治に翻弄された犠牲者だった事実が顔を出す。反対しなかったのはプライドの高さゆえだろう、助けて面倒を見てやった女に最後に捨てられることに耐えられない彼の胸の内が痛いほど切なかった。


◆以下 結末に触れています◆


ただ、上海の高層ビル群やリニアモーターカー、さらに孫娘の年齢や彼女が使うケータイから類推すると、物語の舞台は明らかに21世紀。だが、映画や公式サイトでは1949年の国民党撤退から約40年後の話といっている。本当は50数年後の間違いなのではないのか。心を揺さぶるテーマだっただけに時代考証をきちんとしてほしかった。