こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

映画 妖怪人間ベム

otello2012-12-26

映画 妖怪人間ベム

監督 狩山俊輔
出演 亀梨和也/杏/鈴木福/柄本明/北村一輝/中村橋之助/筒井道隆/観月ありさ
ナンバー 315
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

驚異的な身体能力と純粋な善の心を持つ彼らの「人間になりたい」思いは日々募り、わずかなチャンスに縋り付こうとする。だが、それには人間ならば誰しもが持つ赤黒く濁った「悪」を心身に取り込まなければならない。人間を助けるためにこのままでいるべきか、弱い人間になるべきか。決してスーパーヒーローにはなれない醜い体を人目から遠ざけながら、人間の守護神となる妖怪人間たちの哀しみがリアルで切ない。物語は彼らが妖怪化する人間に対峙し、更なる二者択一を迫られる姿を描く。傑作アニメの雰囲気そのままにビジュアル化された映像は、報われないまま善行を積む彼らの勇気に人生の意味をより深く考えさせてくれる。

ベム・ベラ・ベロは流れた先の町で製薬社員連続殺人事件に遭遇する。調査を進めるうちに、製薬会社社員・上野の死んだはずの妻・サユリの仕業と判明。サユリは不思議な植物の力で蘇生し妖怪化していた。

復讐のために次々と人間を襲うサユリ、止めようとするベムたち。やがてサユリに人間の心を取り戻させようと、彼女の娘・みちるの運動会に連れて行ったりする。その過程でサユリもまた妖怪となるか人間に戻って死ぬかの選択を迫られる。娘には優しい母として記憶していてほしいのにその肉体は徐々に妖怪化していくのだ。愛と正義と命、いずれかを選ぶためには大切な何かを捨てざるをえない、映画は登場人物たちの苦悩と葛藤を通じて、後悔なく生きるなど不可能だが己の行動には責任が伴うことを強く訴える。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、子供の観客を意識しすぎたのか、ベロがみちると恋に落ちるなど余分な要素が入ったためスピード感が損なわれた上、彼らの理解者であるドジな刑事の必要以上のベタな演技が作品の雰囲気を壊している。せっかくネクラで寡黙だが正義感はだれよりも強いベム、蓮っ葉な言葉づかいの陰に優しさが滲み出すベラといったキャラクターを亀梨和也と杏が好演してだけに、作品が幼稚化したのは残念だった。。。

オススメ度 ★★

↓公式サイト↓