グッモーエビアン!
監督 山本透
出演 麻生久美子/大泉洋/三吉彩花/能年玲奈/竹村哲/小池栄子
ナンバー 316
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
くどいまでに常にテンションが高く、己の中の高揚感を他人に押し付ける男。時に周囲を陽気にもするが、ノリについていけない気分の者にとっては迷惑でしかない。しかも生産的活動は一切せず、30歳過ぎても「ロック」の夢に浸っている。映画は、そんな彼が母子家庭の元に帰ってきた来たのがきっかけで起きる騒動を通じて、隠された過去と感情を描く。理解者である女の態度は変わらないが、娘はいつしか多感な年ごろになり人生に向き合わない男にいらだちを感じ始める。誰しも自由に生きることに憧れているだろう、だがそれは決して無責任に生きることではないとこの作品は教えてくれる。
母・アキと暮らすハツキの元に、アキの元同棲相手・ヤグが突然戻ってくる。ロッカー仲間だったアキとヤグはすぐに打ち解けるが、高校進学が間近に迫ったハツキは以前のようにヤグに接しられなくなっている。そして、毎夜バカ騒ぎするアキとヤグにキレてしまう。
大泉洋が演じるヤグの恐ろしく芝居がかった所作に思わず不快感を覚えるのは、ハツキというフィルターを通しているから。親友にヤグの言動をいちいち報告するところを見ると、本当はハツキはヤグが好きなのだ。ところが進路を真剣に検討しなければならない時期なのに、将来など絶対に考えないヤグがうろついている。さらにアキの目は自分よりヤグに向いている。その過程で、反面教師のような大人たちに育てられたハツキの「常識の枠からはみ出したくない」願望が非常にリアルに再現されていた。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
しかし、親友との別れとアキやヤグの思いを知ったハツキは、愛されていないのではなく、彼女自身が他人の気持ちに耳を傾けなかっただけと気づき、すべてを受け入れる覚悟を決める。短い間にハツキは成長したがヤグは変わらないまま。きっとこれからも変わらないだろう。こんな甘い結末でいいのかと思いつつ、許されてしまうヤグがうらやましくなった。。。
オススメ度 ★★*