こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

デッドマン・ダウン

otello2013-11-01

デッドマン・ダウン Dead Man Down

監督 ニールス・アルゼン・オプレブ
出演 コリン・ファレル/ノオミ・ラパス/ドミニク・クーパー/テレンス・ハワード/イザベル・ユペール/アーマンド・アサンテ/F・マーレイ・エイブラハム
ナンバー 266
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

家族がいるから希望が持てる。家族に必要とされているから生きる資格がある。だから、家族を奪われた男は復讐の鬼と化す。物語は偽りの身分で犯罪組織に潜入した主人公が、知略と行動力を駆使して、単身奮闘する姿を描く。その過程で顔と心に傷を負った女に出会い、彼女に惹かれていく。再び大切にすべき者ができた男は彼女を守ることができるのか、深まりゆく孤独と芽生えつつある愛の板挟みになりながら、彼はさらに手を血で染めていく。暗くじめついた映像は彼の苦悩と絶望を象徴し、追い詰めるはずが追い詰められていくミステリアスな構成が興味を引き立てる。

ギャングの手先として働くヴィクターは殴り込みで親分の命を救って信頼を得る。ある日向かいのアパートに住む女・ベアトリスから1人の男の殺害を依頼される。彼女はヴィクターが殺人を犯す場面を録画していた。

ギャングに仕掛けた罠を同僚のダーシーが解明していくにしたがって、ヴィクターの素性も明らかになっていく。妻と娘を殺した組織を壊滅させる大がかりな計画は巧妙な脅迫によって功を奏しかけるのだが、あと一押しが足りない。その間ベアトリスとの距離が縮まり、彼女の身に危険が及ぶ可能性も高まってくる。それでも、ベアトリスと彼女の母と関わるうちにヴィクターは忘れていた感情を少しだけ取り戻していく。ベアトリスの母を演じたイザベル・ユペールがとぼけた味わいを醸し出し、この殺伐とした映画に人間的な温かさを与えていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてダーシーの暗躍とベアトリスのスタンドプレーでヴィクターの思惑は破たん、ベアトリスは人質にとられてしまう。だが、ヴィクターはトラックで突っ込み銃をぶっ放して爆弾を投げるばかりで、ベアトリス奪還作戦はやけくその行き当たりばったりにしか見えない。派手な見せ場が必須なのはわかるが、それが雑な銃撃戦では、張り巡らせた伏線が全く無駄になる。このクライマックスをもっとアイデアに満ちた知的なものに仕上げてほしかった。

オススメ度 ★★*

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