こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ミセス・ハリス、パリへ行く

真面目に働いてきた。夫は国を守るために戦った。なのに、金持ちにバカにされる日常を送らなければならない。物語は、ロンドンの戦争未亡人がパリで夢をかなえる姿を描く。3軒掛け持ち家政婦をしているのに生活はカツカツ、賃金不払いにあったりもする。雇い主たちは露骨に見下した態度をとる。ところが、パリでは労働者階級の発言権が強く、上流階級とも対等に渡り合う。そんな環境で自信をつけたヒロインは、自らの生き方を見直していく。フランス語を理解しない彼女のために英語を使い、困っている時は手を貸し、事情を知った後には特別に接遇したりする。いまだパリジャン・パリジェンヌがそのプライドを保っていた時代、年齢・性別や階級に関係なく外国人に対する親切さを失わない姿勢が印象的だった。

思わぬ大金を手にしたエイダはクリスチャン・ディオールのドレスを買うためにパリ行の飛行機に乗る。現地で偶然知り合った侯爵にエスコートされディオールの新作発表会に潜り込む。

招待状もないのにいきなり押し掛ける図々しさは顰蹙ものだが、現金の力にモノを言わせドレスを作らせるエイダ。気に入ったデザインは1点もの、採寸から仮縫い微調整と大急ぎやっても1週間かかると言われ、経理係のアパートに泊めてもらうことにする。その間、ロンドンでは味わえなかった「お・も・て・な・し」を受け、友達になったモデルの影響も受けて実存主義に目覚めていく。ロンドンでの他人に奉仕する毎日とは違い、パリでは現在も未来も自分で選べる。エイダがパリの人々と交流するうちに見違えていく過程は、英仏間における労働者階級の発言力の差を象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後も、経営難になったディオールの再建に手を貸すなどエイダは大活躍。無事ドレスも完成してロンドンに戻る。夢のような時間から現実に戻されたエイダ、せっかくドレスを作っても着ていくところも見せたい相手もいない。このあたり、あくまで人生を模索し挑戦し楽しもうとするパリ市民との文化の違いが鮮明だった。

監督     アンソニー・ファビアン
出演     レスリー・マンビル/イザベル・ユペール/ランベール・ウィルソン/アルバ・バチスタ/リュカ・ブラボー/エレン・トーマス/ローズ・ウィリアムズ/ジェイソン・アイザックス
ナンバー     219
オススメ度     ★★★


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