こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

MEMORY メモリー

変装し侵入しターゲットを確実に仕留める。酔漢をぶちのめす腕力も射撃の腕も衰えていない。なのに思考と記憶がぼやけ始めている。物語は、アルツハイマー症を発症した殺し屋が己の信念を守るために組織に背き、警察に追われながらも真相を暴いていく過程を描く。請け負った以上容赦なく引き金を引くが、決して子供には手を出さない。プライベートでは友情に篤く女にはやさしい。そんな男が最後に受けた命令は人身売買組織からの依頼。断れないが、すぐに終わるはずだった。あとくされなく引退できるはずだった。だが、自分が殺そうとしていたのは13歳の少女だと知ったとき、依頼人への怒りが爆発する。社会の底辺にいる貧困層の命は安く富裕層は法律に守られている矛盾が格差社会の現実を皮肉っていた。

FBI捜査官・セラはおとり捜査で保護した少女・ベアトリスを施設に匿う。殺し屋のアレックスはベアトリスの暗殺指令を受けるが彼女を見逃し、仲介人を脅迫して依頼者の情報を引き出す。

アレックスは巧みに逃げ回りながら背後の組織を洗い出す。同時にセラにもヒントを与え組織を潰滅させるように導いていく。セラはアレックスを確保しようとするがいつも後手に回り、尻尾をつかめない。一方でアレックスは認知に障害が出て思わぬミスを犯す。差し支えないように薬を服用しているが、それでもクルマのキーの保管場所を忘れたりするのだ。射撃や偽装術・逃走術などの体に染みついた技能はしっかりしているが、人名や電話番号などの短期記憶は腕にメモしているという、老いた殺し屋の現実が切なかった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

アレックスは不動産女王・タヴァナが息子の不始末をもみ消すためにベアトリスを殺させたと知り、彼女のオフィスを襲撃する。セラたちもタヴァナをマークするが、地元警察がガードしている。もはや己を悪党と卑下するアレックスこそが正義と思えてくる。タヴァナを追うセラもいまやアレックス頼み。魑魅魍魎が跋扈する裏社会では暴力こそが唯一信じられるとこの作為品は教えてくれる。

監督     マーティン・キャンベル
出演     リーアム・ニーソン/ガイ・ピアース/モニカ・ベルッチ/タジ・アトウォル/レイ・フィアロン/ハロルド・トレス
ナンバー     89
オススメ度     ★★*


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