監督 カール・リンシュ
出演 キアヌ・リーヴス/真田広之/浅野忠信/菊地凛子/柴咲コウ/赤西仁/田中泯
ナンバー 271
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
日本の古典もハリウッド流に解釈すると、魑魅魍魎が跳梁跋扈する幽玄の世界で繰り広げられる忠義と正義の物語に書き換えられる。恥辱を雪ぐために苦難に耐え、名誉を守るためには命を惜しまない。そこにあるのは主君への絶対的な忠誠と、自身に対するヒロイズム。死に美学を求め、死してなお体面にこだわる武士の魂だ。映画は「忠臣蔵」をベースに、刃傷沙汰から家臣による復讐・切腹までを描く。緑濃い森で暴走する巨大獣、幽深の山奥で修業に励む異形の行者、妖術と幻術・・・それら人智を超越した存在と人間の心に潜む欲望が織りなす奇譚は「蜘蛛巣城」と「もののけ姫」を想起させる。日本文化を隅々まで研究し、日本人の想像力をはるかに凌駕した日本的イメージを構築した映像は、決して日本人のメンタリティを誤解しているのではなく、こうであってほしいというハリウッドの理想なのだ。
赤穂藩主・浅野に救われた“鬼”との混血児・カイは、将軍隣席の武芸試合で吉良家の剣士に敗れる。その夜、魔女に催眠術をかけられた浅野が吉良を襲い、将軍から切腹を命じられる。赤穂藩士は浪人となり、カイは奴隷に身を落とす。
赤穂浪士のリーダー・大石は吉良の魔女に対抗するためにカイを救出、仲間に加え、散り散りになった藩士を集め仇討のチャンスをうかがう。その過程で、厳格な身分制度の下、下男扱いだったカイを同士として迎え入れようとするが、他の藩士はカイを認めない。だが、どんな理不尽な扱いも運命と受け入れ、寡黙に己の生を全うしようとするカイの姿はまさに武士の鑑。やがて彼らもカイの剣術と勇気に、武士のプライドよりも大切なものに気づいていく。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
そして、満を持した浪士たちは吉良の城に潜入、奇襲をかける。四十七士が夜陰に乗じて石垣を登り、矢を放ち、見張りを倒ていく場面は、もはや忍者のよう。ただ、最大の見せ場であるこの“討ち入り”シーンに3Dの効果があまり発揮されていないのが残念だった。
オススメ度 ★★