電気もない水道もない。乾電池式のラジオと自転車はあるけれど不作で学費が払えない。深刻な飢饉に見舞われても政府からの援助は期待できない。そんな時、村を救ったのはアイデアと創意工夫。物語は、手作りの風車で灌漑に成功した少年の戦いを描く。いまだ家父長制が色濃く残るアフリカの発展途上国、族長の権威は絶大。部族を守るための方策は裏目に出て、村の生活は先細りするばかり。デモクラシーを騙る独裁者に訴えても暴力で封じ込められる。せっかく届いた物資も民衆には行き渡らず、食糧強盗まで現れる。21世紀の話とは思えないほど先進国と乖離した人々の暮らしぶりは衝撃的だった。カネやモノでは近代化は進まない、彼らが伝統や因習にとらわれている限り貧しさから脱却できないと主人公の勇気が証明していた。
干ばつと洪水で授業料を払えなくなったウィリアムは教室から追い出される。だが、ごみ捨て場で拾ったガラクタから風力発電を思いつくと、図書館に紛れ込み独学で風車の作り方を学ぶ。
もともと指先が器用なウィリアムはラジオの修理などを請け負っていて、メカには強い。しかし風車の部品とポンプやバッテリーは見つけられても、発電のためのダイナモがなかなか手に入らない。自転車にはついているが、高価な貴重品で誰も譲ってくれない。今日の食べ物の確保といった目先のことしか考えられなくなった父親を説得するシーンは、好奇心と向学心、何より現状を変えようとする向上心こそが未来を豊かにすると教えてくれる。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
アフリカには数十年以上にわたって支援が行われてきた。ところが、機能せず役人や政治家を太らせるだけだったり、作った施設もメンテナンスされずに放置されたりする。一方で、与えるともっとよこせというのは人間の本性。先進国がすべきなのは、食料でもインフラでも、途上国の人々自身が考えて彼らの手で作り上げる過程の手助けだとこの作品は訴える。ウィリアムの風車で潤った大地に芽吹いた作物は、彼らの腹以上にプライドを満たしたはずだ。
監督 キウェテル・イジョフォー
出演 キウェテル・イジョフォー/マックスウェル・シンバ/アイサ・マイガ
ナンバー 182
オススメ度 ★★★
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