こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ウィ、シェフ! La Brigade

レシピには絶対の自信があるのに上司との反りが合わない。きちんと調理した食材を食べさせたいのに質より量を求められる。物語は、腕はいいのに我の強い女料理人が不法滞在少年たちにキッチンの作法を教え、共に成長していく姿を描く。盛り付けた料理など食べた経験がなく食事はカロリー摂取と考える収容施設の人々に、ヒロインは食を通じて人生についてレクチャーしようとする。少年たちもまた技能を身に着けることで未来が開けていく。彼らはアフリカや南アジアの途上国出身だが、目標を与えれば規律を守り向上心を持って課題に取り組む勤勉さを持っている。大都市郊外にたむろする不良外国人もきちんと教育すればまじめな労働者になっていたはず。職業訓練こそが犯罪を減らすとこの作品は訴える。

有名レストランをクビになったカティは未成年不法渡航者収容施設に雇われる。さっそくキッチン改革に取り組み、人手不足を補うために料理教室を開く。

多少気の荒い者もいるが、少年たちはカティの指示に従い “ウィ、シェフ“ と元気に返事する。もともと祖国では優秀な人材だったのだろう、呑み込みが早く手先も器用。反抗した少年もキッチンに戻り、カティは教える立場の楽しさ、生徒たちは学ぶ喜びを胸に抱くようになり、施設全体に明るさが戻ってくる。施設長や語学教師と行き違いがあったりもするが、彼らもまた少年たちの将来を真剣に考えていると知ったカティは、自己主張ばかりではなく妥協案を飲む程度には人間が丸くなっている。停滞していた人生でも、ちょっとしたきっかけで再び加速できると彼らの変化は教えてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、カティは料理対決番組に出演を決意、自分をクビにしたレストランにリベンジを誓う。当然生徒たちは彼女の手足となって手を貸す。と思わせて、映画は予期せぬ変化球を投げてくる。ただ、そこまでに至る過程で彼らの前に立ちふさがる障害が低いのが物足りない。悪くはないが、起承転結の「転」を刺激的にすればもっと大きなカタルシスを得られたと思う。

監督     ルイ=ジュリアン・プティ
出演     オドレイ・ラミー/フランソワ・クリュゼ/シャンタル・ヌービル/ファトゥ・キャバ/ヤニック・カロンボ/アマドゥ・バー/ママドゥ・コイタ
ナンバー     96
オススメ度     ★★★


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