こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

“隠れビッチ”やってました。

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コクられた男に断りの電話を入れるとき必ず小指で鼻の穴をほじっている。デート中のぶりっ子とは正反対のだらしない姿、そのギャップが大いに笑わせてくれる。物語は、男の恋心を手玉に取ることで承認欲求を満たしてきた女が本物の愛に目覚めるまでを描く。愛されていたい、求められていたい。ルックスの良さと女の子っぽい仕種で男たちを操ろうとするのは幼いころに受けたDVによるトラウマの裏返し。好きだと言われているうちは楽しいけれど、誰かを好きになるとその思いを相手に押し付けてしまう。結局、自己チューでワガママなだけ。さらに追いかけるべき夢もない我が身がちっぽけな人間に思えてしまう。そんなヒロインが失敗を重ねながらも成長する過程は共感を呼ばない分、突き放した気分で見ていられる。

勤務先で知り合った男にアプローチしたひろみは、恋したつもりになっていたが彼の浮気を目撃する。ショックのあまり公園で泥酔していると、同じ職場の三沢に介抱される。

とんでもない醜態をさらしたひろみに対しても三沢はあくまで紳士的、積極的に言い寄ってくるわけではないが嫌われていないのは確か。ひろみは三沢の前では飾ろうとはせず、かえって三沢はひろみに好意を持ち始める。そして突然のキス、“体はそれなりにピュアだ” と開き直るひろみの勘違いぶりはイタさを通り越してむしろコミカル。容姿に恵まれているだけでこれほどまでに全能感に浸れる、こんな女には早く天誅が下れと期待してしまう。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その間、同居人の彩と些細な原因で大げんかしたり、せっかく付き合いだした三沢にも不機嫌を丸出しにしたりとやりたい放題。手の届く範囲はすべてコントロール下に置きたいというひろみの願いはエスカレートしていく。ほどなく持ち出された別れ話。父の見舞いで、ひろみはあれほど憎んでいた父と性格がそっくりだったと気づき、自分が、父と同じタイプの “嫌なヤツ” で周囲に多大な迷惑をまき散らしていたかを悟る。どうせなら最後までビッチを貫いてほしかったが。

監督  三木康一郎
出演  佐久間由衣/村上虹郎/大後寿々花/小関裕太/森山未來
ナンバー  290
オススメ度  ★★*


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