こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

街の上で

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フラれたり、くっついたり、新しい出会いがあったり……。ありふれた暮らしの中でも毎日何らかの変化が起きている。映画は、東京・下北沢に住む青年の弛緩した日々をスケッチする。ほとんどの時間読書している古着屋の店番、夜はふらっとライブに出かけ、馴染みのバーで一杯ひっかける。親しい友人もいないし彼女とは破局したばかりだけれど、孤独を感じるほどでもない。ユル~い人間関係の中で、向上心がなくても何とか生きていけるし、熱烈歓迎されなくても拒絶されるわけでもない。噛みあわない会話と奇妙な間の取り方が絶妙で思わず腹を抱えてしまった。運命なんて大げさなものは信じていない。人生なんて真剣に向き合わなくてもとりあえず死にはしない。できることにだけ手を付けて嫌なことは避けて通ればいい。そんな安心感を与えてくれる作品だった。

恋人の浮気が原因で別れた青はいまだに未練タラタラ。ある日、自主映画監督から本を読む姿を撮りたいと依頼され、古書店員相手にカメラ映りの練習を積んだうえで撮影に臨む。

本番では緊張のあまりまったく画にならず青の出演ショットはボツにされる。それでも打ち上げで知り合ったスタイリストのイハと意気投合、彼女の部屋で語り明かしたりする。その間カメラは青と青の周辺のさまざまな出来事にフォーカスするが、特に方向性を持ったストーリーが展開するわけではない。にもかかわらず、少しひねりを加えたシチュエーションとずれた台詞がちりばめられた脚本が意外な共感を呼び、狭い世界に安住する青の日常にリアリティをもたらしていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

イハとお互いの恋バナで盛り上がった青はそのまま彼女の部屋に泊るが、手も握らないまま朝を迎える。青の押しの弱さとか女心への鈍感さが、安全な男と思われている理由なのだろう。元恋人への思い以外ガツガツしたところのない青の他人への関わりに対する淡白さは、自分を守るための防御壁。傷つかない、傷つけられないように感情を抑える青はいかにも現代風の草食男子だった。

監督  今泉力哉
出演  若葉竜也/穂志もえか/古川琴音/萩原みのり/中田青渚/成田凌/
ナンバー  21
オススメ度  ★★★★


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