こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

スーパーサイズ・ミー

otello2005-01-09

スーパーサイズ・ミー SUPER SIZE ME

ポイント ★★★*
DATE 04/9/28
THEATER 東芝エンタテインメント
監督 モーガン・スパーロック
ナンバー 113
出演 モーガン・スパーロック
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


見るからにこってりとした糖分と脂肪分たっぷりのファーストフード。その中でもマクドルドをアメリカ人の肥満の元凶と特定し、そのメニューを1日3食30日間食べつづけるという体を張った実験を敢行する。まさに命がけの難行苦行だ。健康だった肉体がたちまち不健康に膨張を始め、それはやがて精神までも蝕んでいく。マクドナルドが提供する食品がいかに肥満を助長しているか、モーガン・スパーロックは自らの肉体で証明していく。


綿密な健康診断を受け、気の遠くなるような人体実験に臨むモーガン。並行してファーストフードがどんなにアメリカ国民の生活に浸透し、健康を浸食し、肥満人口を増やしているかを検証する。いまや学校給食までファーストフード化してしまいロビイストたちが業界保護のために奔走する姿を見ていると、「自分たちが太ったのはマクドナルドのせいだ」マクドナルドを訴えた二人の少女の主張もうなずけてくる。幼い頃よりブランド名と味を刷り込み、子供たちを「マクド漬け」ともいえるような半ば中毒のような状態にしてしまう。さらに、注文の時により大きなサイズを勧め摂取カロリーの増大に拍車をかけるのだ。


マイケル・ムーアの作品同様、決して深刻になりすぎないところがよい。業界大手の会社を相手にあくまでドンキ・ホーテのように戦いを挑み、それでも一矢を報いようとする姿勢はどこかコミカルで笑いを誘う。大企業を告発する一方でエンタテインメント性も忘れない。そして、アイデアひとつで問題提起になりつつおもしろい作品が作られるというところが、アメリカ人の発想の柔軟性がにじみ出ていて感心する。


実験5日目でモーガンはついに体が拒否反応を示し食べたものを戻してしまう。それでも食べつづけていくうちに、いつしか体がマクドナルドの食品に順応してしまうのだ。そして食品の成分が徐々にモーガンの体を毒していく。これこそこの映画が描く静かな恐怖だ。


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