ネバーランド FINDING NEVERLAND
ポイント ★★★★
DATE 05/1/16
THEATER ワーナーマイカル新百合ヶ丘
監督 マーク・フォースター
ナンバー 8
出演 ジョニー・デップ/ケイト・ウィンスレット/ダスティン・ホフマン/ジュリー・クリスティー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
夢を信じ続ければきっとかなう。誰もがそう思うこと自体が夢であることを知っている。それでも想像の中で自由に翼を広げて、心の中にある「ステキなもの」「楽しいもの」「ワクワクするもの」を次々と思い浮かべる。ほとんどの人間は大人になる過程でネバーランドを「どこにもない場所」だと思い込む。本当は「誰の心にもある場所」、みんなそれを忘れているだけだ。「ピーターパン」作者の製作秘話を通じてもう一度大人にもネバーランドの存在を信じさせてくれる、そんな優しさと暖かさを持った作品だ。
新作の不振で落ち込んでいた劇作家のバリは、ある日散歩の途中で4人の子供を持つ未亡人と知り合う。4兄弟のうち三男のピーターだけは父の死のトラウマから抜けられず、子供らしい無邪気さとは無縁。バリはピーターの心をほぐすため、夢にあふれた新作の執筆を始める。
「演劇(プレイ)なんて、そもそも遊戯(プレイ)じゃないか」。新作の不入りに落ち込むバリに対して興行主がそんな慰めの言葉をかける。その言葉に勇気付けられ4兄弟と無邪気にそして真剣に遊ぶバリ。真剣に遊び真剣に楽しんで初めてネバーランドが心に見える。犬を熊に見立ててダンスを踊ったり、荒れた庭で西部劇ごっをしたり。誰もが子供の頃棒切れを刀に見立ててチャンバラをしたことを思い出すだろう。
映画は、未亡人一家に入り浸るバリに対する心無い噂、バリの妻や未亡人の母などの無理解などを織り交ぜて、バリの住む現実世界がけしってネバーランドではないことを描く。芝居を見ている間だけでいい。ベッドに入って眠りに落ちる前の数分だけでいい。妖精を信じ、空を飛ぶことを夢想する気持ちがあれば人生に対して前向きになれる。一つ間違えれば宗教じみた説教になりかねない題材を、うまくオブラートに包み心温まるストーリーにまとめあげた脚本と余情たっぷりの美しいカメラワークが、温もりに満ちたカイロを抱いているような気持ちにさせてくれた。