こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

バットマン・ビギンズ

otello2005-06-22

バットマン・ビギンズ BATMAN BEGINS

ポイント ★★*
DATE 05/6/18
THEATER 池袋シネマサンシャイン
監督 クリストファー・ノーラン
ナンバー 74
出演 クリスチャン・ベール/マイケル・ケイン/リーアム・ニーソン/モーガン・フリーマン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


正義の味方も苦悩する。自分自身の正義に自信が持てず、何が本当の正義なのかわからない。自らの欲望のために犯罪に手を染め、罪のない人を簡単に殺すような単純でわかりやすい「悪」なら、対峙し戦うことで自分の正義を確認できる。だが、ヒーローが自分の戦う理由に疑問を持ち始めると物語としての流れが止まってしまう。結局、バットマンは自分が「選ばれし者」という自覚があまりないのでは、と勘ぐってしまった。


幼いころ目の前で両親を殺されたブルースは復讐を果たせず正義を探すたびに出る。アジアの山中でその身体的能力を秘密結社に見込まれたブルースはそこで修行し、更なる体術と精神力を身に付ける。ゴッサムシティに戻ったブルースは父が経営していた大企業に戻り、犯罪のはびこる街を浄化するために自らバットマンとなる。そしてゴッサムシティ破壊計画を阻止するべく仲間を集めともに戦いを始める。


コミックヒーローを実写化するならば、それなりの世界観を持たせてどっぷりとはまり込むような演出をしなければならないはず。しかしこの作品は中途半端。せっかく世界中から調達した素材で特注したバットマンのコスチュームを身にまとうのに、主人公のブルースはいまいち超人的な強さを発揮できない。悪人を退治し正義がなされたときの爽快感からは程遠く、そこに残るのはバットマンの暗い表情と同じような消化不良の後味の悪さだけだ。


また、以前のシリーズと比べても悪役のキャラが立っていないのが物足りない。キャットウーマンリドラーのようなこのシリーズにふさわしい悪党ではなく、善悪の彼我を哲学的に語る禅僧のような男。ゴッサムシティに対する破壊行為の目的も抽象的で、結局何がしたかったの? と問いたくなる。神秘的なベールをまとった導入部に期待は膨らんだ。その雰囲気を最後まで持続させていれば、新しい「バットマン」の誕生を祝福できたのだが。。。


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