こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

中学生円山

otello2013-05-20

中学生円山

監督 宮藤官九郎
出演 草なぎ剛/平岡拓真/遠藤賢司/ヤン・イクチュン/坂井真紀/仲村トオル
ナンバー 119
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

暴走する妄想を抑えきれない。それは豊かな想像力の産物なのに、頭が変になったのかと少年は悩む。そして思いのままにならない日常から逃避していると言われるのが怖くて打ち明けられない。映画はそんな中学生が初めて出会った理解ある中年男との交流を通じ、限界を打破する力を身に付けていく過程を描く。“ありえないを破壊しろ”、その中年男の言葉は現状に悶々とする主人公がいちばん求めていたメッセージ。被害妄想からヒーロー願望まで彼の脳裏に浮かぶイメージの映像化はすべてが楽しく切なく時に笑え、深く共感してしまう。

自分の性器をなめるために身体を柔らかくする“自主トレ”に日々励む克也は、背中を曲げきると妄想のスイッチが入ってしまう。ある日、克也は上階に引っ越してきたシングルファザーの下井に自身の妄想癖を告白するが、下井はバカにせず耳を貸してくれる。

真夜中の公園でヌーブラ白パンツのギャル集団に交じって裸踊りに興じる克也。同じ棟に住む美人同級生とイイ感じになる克也。妄想の中では世界の中心でいられる。ところが近所で殺人事件が起きると下井が犯人ではないかという発想に縛られてしまう。それでも下井は克也を決して否定せず、身近な人を殺し屋やヒーローと仮定するアイデアを膨らませようとする。それらはとぼけた味わいがあってユニークだが、これほどまでに連発されると食傷気味。ありえない願望が妄想の醍醐味なのはわかってはいるが……。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

下井もまた、世の悪に天誅を加える正義の味方となって憎い男を殺す場面を繰り返し妄想したに違いない。「妄想が現実を超えるとき、それは真実になる」と克也に熱弁する下井は、正しい意志は実行してこそ価値を持つと伝えたかったのだろう。仮面のヒーロー“中学生円山”となった克也には下井の魂が乗り移り、体操選手のように柔らかくなった肉体を駆使してチンピラと戦う克也の姿が、おかしくもほろ苦い彼の成長を象徴していた。

オススメ度 ★★*

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