こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

オーロラ

otello2007-01-09

オーロラ AURORE


ポイント ★
DATE 06/12/25
THEATER シャンテ
監督 ニルス・タベルニエ
ナンバー 228
出演 マルゴ・シャトリ/ニコラ・ル・リッシュ/キャロル・ブーケ/フランソワ・ベルレアン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


生きる喜び、恋のときめき、そして身分が違う人を愛してしまった苦悩。揺れ動く乙女の感情を、優雅でしなやかに伸びた手足と柔らかい身のこなしで表現するヒロインの美しさに思わず息を飲む。しかし、ソフトフォーカスの上に暗く沈んだ映像が、踊りのすばらしさをまったく台無しにしている。この映画の監督はライティングというものを知らないのだろうか。カメラマンは光量を測定しないのだろうか。せっかくパリオペラ座のエトワールを起用しているのに、そのダンスをきちんと見せようとしない撮影の手法は杜撰としか言いようがない。


ダンスが禁じられた国の姫・オーロラは父王の目を盗んでは踊りに興じている。しかし、国の財政は行き詰まり、オーロラは政略結婚のために他国の王子と見合いをさせられる。だが彼女は肖像画家に恋をしていた。


一度目の見合いの席で王子のダンサーチームが見せるアラビア風のダンスは洗練された力強さがみなぎり、鍛え上げられた肉体が見せる筋肉の躍動が魂の息吹を呼び覚ます。これほどのパフォーマンスをきちんと撮影していれば、それだけで感動を呼び起こすことができただろ。しかし、前述のとおり画面は暗くくすんでいて、ダンスのすばらしさが半減していた。


結局、恋人の画家は殺されるが、ワシの精の導きでオーロラと画家は雲の上で再会する。地上でかなえられなかった恋が、天上で結ばれる。その歓喜を気持ち、愛に満たされた心を2人はダンスにする。このシーンでも、もともとソフトフォーカスで撮影しているんもかかわらず、なんとスモークを焚くという蛇足を付け足し、ぼやけた画面をさらにぼやけさせるという愚を犯す。まったく映画というものをわかっていない監督とカメラマン、彼らには二度と映画を撮らせないのが賢明だろう。


↓メルマガ登録はこちらから↓