こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

チェ 39歳 別れの手紙

otello2009-01-24

チェ 39歳 別れの手紙 CHE:PART TWO


ポイント ★★★★
DATE 09/1/21
THEATER GAGA
監督 スティーヴン・ソダーバーグ
ナンバー 17
出演 ベニチオ・デル・トロ/フランカ・ポテンテ/ルー・ダイアモンド・フィリップス/カルロス・バルデム
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


あてにしていた支援が得られず、搾取されているはずの人民の教化も遅遅として進まない。輝かしい成功体験を引っさげて意気揚々と乗り込んだ新天地はあまりにも予想と違い、兵士たちの士気の低下と規律の緩みは手に負えない。さらにキューバの二の舞を恐れた米国の援助のもと、高度な訓練を受けた特殊部隊に追い詰められていく。映画は革命を南米に広めようとして挫折したゲバラの最期の約一年に焦点を当て、息絶えてもなお高潔な理想を捨てなかった壮絶な生きざまに迫る。


カストロに別れを告げてボリビアに潜入したゲバラは現地で反政府ゲリラ部隊を組織するが、共産党の協力を得られず、地元の農民からもなかなか支持されない。一方で、ボリビア政府軍はゲバラ掃討のためのレンジャー部隊を組織する。


補給が覚束ず、食糧や医薬品が不足する中、喘息の発作にも苦しむゲバラ率いるゲリラ部隊は険しい山やジャングルの道を進む。行軍と共に農民から多数の同調者が現れ勝利を確信できたキューバとは違い、ボリビアの農民は政府軍に内通し、居場所は筒抜けになっている。激しく消耗し、希望が徐々に薄れても「革命には勝利か死しかない」というモットーどおり降伏という選択肢はない。それでも、弱音を吐かず難局を切り抜けようとするゲバラの姿は、もはや勇敢を通り越して狂信的ですらある。


ゲバラは政府軍に捕らえられ、革命の失敗を認めた上で処刑される。このシーン、カメラはゲバラの主観となり、銃弾に崩れ落ちた彼の視線は地面を見つめやがて意識がなくなるようにフェイドアウトしていく。ゲバラが最後に見た地面=土地の適正な分配こそが革命の第一義であったことを象徴しているようだ。映画は前後編を通じ、ゲバラを革命のシンボルとして神格化することなく素顔に迫ろうとする。そこに描かれたのは、苦難に自ら身を投じる勇気と、決して揺らがない鋼鉄の意志。道半ばで命尽きても自分の使命に向かって歩み続けようとするゲバラの姿を、ベニチオ・デル・トロは鬼気迫る形相で演じきっていた。


↓メルマガ登録はこちらから↓