こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

スター・トレック

otello2009-05-02

スター・トレック STAR TREK


ポイント ★★★*
DATE 09/5/1
THEATER YH
監督 J.J.エイブラムス
ナンバー 104
出演 クリス・パイン/ゾーイ・サルダナ/ザッカリー・クイント/サイモン・ペッグ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


確実に死ぬという絶望的な状況でも冷静に任務を遂行する精神力、あえて危険に身を投じ無謀な作戦で死中に活を求める度胸と勝負勘。一見矛盾するような能力を併せ持つ者だけがUSSエンタープライズのキャプテンとしての資格を持つ。暴走とケンカに明け暮れる若者が父の遺志を知り生涯にわたる友人を得る過程で、心身ともに鍛えられてゆく。青年を強く責任感のある男に育てていくのは、強大な敵と固い友情。それは科学や文明が高度に発達しても変わらない。


無軌道な人生を送っていたカークのもとにパイク艦長が現れ、自己犠牲で800人の命を救った父の功績を話す。カークは連邦艦隊に入隊を決意、優秀な成績を残すがジコチューな性格でトラブルを頻発する。そんなとき、連邦艦がロミュラン船の攻撃を受け、エンタープライズ号は緊急発進する。


いまだバルカン人の理想とされる、コリナーの境地に達しない少年時代のスポックのエピソードが素晴らしい。地球人とのハーフで、喜怒哀楽を完全には抑制できず親の悪口を言われるとつい頭に血が昇る。さらに地球人の資質を欠点といわれて任官を拒否したりもする。長じた後の、常にクールなスポックには見られない一面、若さゆえの未熟さはその人の本来の性質なのだ。スポックの父が、「地球人の女と結婚したのは観察のため」と一度はスポックに感情に対する論理の優越を説くが、本当は愛していたからだと告白するシーンが、あらゆる人間性を肯定しているようでうれしかった。


ロミュラン船は百数十年後の未来から来たという設定で、それゆえ破壊力で連邦艦隊を圧倒する。同時に、年老いたスポックもタイムスリップしていて、エンタープライズを追放されたカークに未来人としてのアドバイスを送る。要するにTVと付随する映画のシリーズとは、同じ登場人物でも別バージョンのストーリーであると気を使っているのだろう。そんな屁理屈のために過去を変えなくても、血気にはやる若き日の乗組員たちの成長する姿を見ているだけでも十分に楽しめたが。。。


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