こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

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otello2009-05-03

消されたヘッドライン STATE OF PLAY


ポイント ★★★*
DATE 09/5/1
THEATER THTW
監督 ケヴィン・マクドナルド
ナンバー 103
出演 ラッセル・クロウ/ベン・アフレック/レイチェル・マクアダムス/ヘレン・ミレン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


安全保障という名の下で湯水のように浪費される国家予算。紛争をビジネスチャンスととらえ、事業として参入するセキュリティ会社。そしてその先にある、国内の治安活動まで民間任せにする計画。軍拡競争が終わり、大量殺りく兵器よりもマンパワーに頼らざるを得なくなった21世紀、需要にこたえるべく民間企業が傭兵の育成・派遣を行い巨利を得る。映画はジャーナリストの目で米国の産業構造の腐敗を暴くとともに、不正を告発する側もまた倫理的欠陥を持つという、人間の複雑さを描く。


銃撃事件で2人が死傷する。翌日、コリンズ議員の女性スタッフ・ソニアが地下鉄で死亡、コリンズが涙を流したことからふたりの愛人関係が発覚する。コリンズは民間企業の軍需請負疑惑を調査中だったが、マスコミの餌食になり、旧友の新聞記者・カルに助けを求める。


その後さらにソニアの素性や凄腕の殺し屋の暗躍、架空団体と政治的圧力などが取材の線上に浮かびあがり、銃撃事件とソニアの死が結びつき、カルの考えた陰謀説が徐々にリアリティを帯びてくる。そこにカルと同僚の粘り強い聞き込み、編集長との対立、コリンズの妻との過去など、カル個人の思惑も重なってさまざまな要素と人間関係が複雑に絡まりあう。脚本はそのあたりの交通整理をそつなくこなし、内容を詰め込みすぎにているにもかかわらず、二転三転するストーリーをテンポよく展開させる。


コリンズが追及した政治と軍事の金権体質、一方でコリンズの不徳と秘密。彼自身はカネに汚れてはいないけれど、闇の部分を抱えている。記者であるカルは知りえた事実を記事にしようとするが、新聞の読者はもっとわかりやすくスキャンダラスなネタを好む。完全な正義など却って嘘くさく、世界には理想と現実が混在しどんな人にも裏表がある。清濁併せのむ器量とともに、真実を見極める目はきちんと持ち続けなければならない必要性を、強烈に訴えていた。結局この作品の中で誠実さは、ソニアの悲報にコリンズが流した涙と、殺し屋の歪んだ忠誠心だけだったのだから。。。


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