こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

バーレスク

otello2010-12-28

バーレスク Burlesque


ポイント ★★★
監督 スティーブン・アンティン
出演 クリスティーナ・アギレラ/シェール/エリック・デーン/スタンリー・トゥッチ
ナンバー 306
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


ベル・エポックのパリの爛熟、ナチス配下のベルリンの退廃、戦後ニューヨークの喧騒。それら20世紀の文化的要素をミックスして21世紀LA風のアレンジを加えたステージは、セクシーとアンニュイとゴージャスがほとばしるような迫力となって見る者の目をスクリーンに釘付けにする。物語は、成功を夢見て都会にやってきた歌手志望の娘が持ち前の根性でチャンスをつかみ、スターへの階段を登っていく手垢のついたものながら、ダンスと音楽と歌がセットになったミュージックビデオのようなクラブシーンだけでも映画の楽しみを満喫できる。レトロとモダンを有機的に融合させたショーは、斬新さの中にもデジャヴを覚えるユニークさがあった。


退屈な田舎暮らしから逃げるようにLAに出てきたアリは、バーレスクというクラブで働き始める。経営者のテスに無理やりバックダンサーに採用してもらい舞台に出るようになるが、ある日彼女のナマ声を聞かせるハプニングが起こり、それを機会にアリは歌手としてデビューする。


客は歌よりも下着姿で悩殺するダンサーの肢体が目当てという方針のもと、彼女たちは口パクで決して声を出さない。偶然とはいえ、アリの人を魅了する歌声はたちまち評判になり、アリはセンターを張るまでになる。そこに至るまでに、プロの厳しさやダンサー同士の嫉妬と確執、バーテンとの恋、店の買収を目論む不動産屋との甘いロマンスと現実などを見せられ、アリはショービジネスの世界で生きるとはどういうことかを学んでいく。ただ、このあたりは起伏に乏しく、予想通りに展開して何のひねりないのが物足りない。


◆以下 結末に触れています◆


それでも、自分の目標を実現するまでは絶対にあきらめないアリのチャレンジ精神と押しつけがましいずうずうしさ、そして強烈な自己主張は、現代の一般的な日本人、特に若者に決定的に欠けている資質。その姿勢を見ているだけでも元気が湧いてくる作品だった。