こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

スーパー!

otello2011-07-01

スーパー! SUPER

ポイント ★★*
監督 ジェームズ・ガン
出演 レイン・ウィルソン/エレン・ペイジ/リヴ・タイラー/ケヴィン・ベーコン
ナンバー 151
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


冴えない容姿で意気地なし、他人にはいつもからかわる。もちろん空想の中ではイケてる自分に浸っているが、叶わぬ夢だとあきらめている。そんな男が美しい妻を奪われて一念発起、正義のヒーローになる決心をする。しかし、大した運動能力もなく、ただ相手の不意を突いてレンチを振るうだけしか能がない。それでも妻を取り戻すために突き進む姿は、滑稽である以上に意志の力と愛を感じさせてくれる。世界を変えようと立ち上がっても、結局何も変わららない。でも少なくとも自己は変えられる。主人公のショボい活躍を通じて、物語は一歩踏み出す勇気を描く。


麻薬ディーラー・ジョックの下に家出した妻・サラを奪い返す算段をするフランクは、天啓を受けてスーパーヒーローになる決意をする。真っ赤なコスチュームを手作りし、クリムゾンボルトと名乗って街のチンピラに天誅を加えていく。


クリムゾンボルトが制裁を加えるのは麻薬の売人や児童買春者といった末端のワルばかり。一方で、行列に割り込んだ男にもレンチを見舞う。悪事を悪事と自覚して世間の目を盗んで活動する犯罪者よりも、本当はマナーを守らず開き直るような不届き者にフツーの人々は怒りを覚えている。映画はそういった観客の心理を掬い取り、日ごろの小さな鬱憤を晴らしてくれる。なにより、ジョックに「クルマに触るな」と言われて指先で触れるしかできない小心者のフランクが、変身したとたん大胆な行動を取れるようになる、その落差にこそ共感できるのだ。


◆以下 結末に触れています◆


やがて、フランクはリビーというイカれた娘を相棒・ボルティとして採用、武器を揃えてジョックの屋敷を襲う。ボルティの暴力性は見境なくエスカレートしていくがフランクに止める術はない。このあたりもう少し彼女の内面に踏み込んで、どういう人物なのかを測るエピソードがほしかった。結果的に公開時期が遅れたために「キック・アス」の亜流にしか見えないが、ボルティとヒットガールの魅力の差が、そのまま作品のクオリティの差になってしまった。冒頭の手描きアニメなど非常にクールで楽しめるシーンも多かっただけに、こちらを先に見ていれば印象も違っていたと思うが。。。