こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

七つまでは神のうち

otello2011-08-22

七つまでは神のうち

ポイント ★★*
監督 三宅隆太
出演 日南響子/霧島れいか/飛鳥凛/藤本七海/駒木根隆介/竹井亮介/宝積有香/松澤一之
ナンバー 199
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


過去と現在、夢とうつつ、愛と怨念。少女たちは何の影におびえ、何が起きるのを恐れているのか。若い母親は失った大切なものを取り返すことができるのか。映画は、一見無関係な4人の女を結びつける封印された記憶をたどりつつ、人間の感情が生み出す妄想が恐怖に昇華していく瞬間をとらえていく。複雑に入り組んだパズルのピースのような様々なエピソードが一つの真実に収斂していく構成は、ホラーの範疇を突き破り上質なミステリーの趣すら持っている。


心を病んだ女子高生・繭は縛られた女が載せられたバンを見つけ父の車で追跡するが、その女とともに作業服の男に捕えられる。親戚の家の留守番を頼まれた薫は市松人形に襲われる。新人女優の麗奈は撮影の帰りに廃校舎に迷い込む。再会した3人は10年前の出来事を思い出す。


並行して、さくらという娘が行方不明になった両親が登場するのだが、母親のほうはさくらが7歳になるまでに神隠しにあうのではないかと心配している。ちょっと目を離したすきにさくらがいなくなる、その悪夢が現実となり、街頭で尋ね人のビラを配るシーンが悲しみを誘う。事件性がない以上、警察は積極的に動いてくれない。帰ってきたのはお守りだけ、両親は心労に押しつぶされそうになりながらもわずかな希望に縋り付こうとする。そんな、失踪者の肉親が覚える苦悩が非常にリアルで身につまされた。毎年1万以上が消息を絶ち迷宮入りしているという警察発表を紹介するプロローグがここにきて生きてくる。


◆以下 結末に触れています◆


やがて、女高生たちが忘れていた事件をよみがえらせたとき、拘禁されたのは自分たちに対する復讐だったと気づく。さくらの両親はあの世でやっと見つけた愛娘に真相を聞かされたのだろう、彼らの超現実的なパワーは次々に少女たちに鉄槌を下していく。箱詰めにされた上地中に生き埋めにされた繭が直面する後悔と絶望、その死までの時間の長さこそが一番の精神的苦痛となって、見る者の想像力を掻き立てるのだ。