こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

国家が破産する日

f:id:otello:20191122172116j:plain

好景気に浮かれていた。先進国に近づいたと無邪気に喜んでいた。だが実質は外貨準備高が目減りし中小企業の給料遅配が表面化している。なのに政治は手をこまねいているばかり。物語は1997年に韓国を襲った金融危機を、役人・投資家・町工場経営者の視点から追う。早くから破綻を予測していた役人は懸命に上司に訴えるが相手にされない。機を見るに敏な投資家は政府の嘘を見抜き一儲けを企む。人情に篤い工場経営者は取引先を信用して窮地に陥ってしまう。未曾有の国難に直面した時どう行動すべきか。そこで問われるのは個人の生き方とプライド。高級官僚は優柔不断で大統領は能天気、投資家は一世一代のチャンスと勝負に出る。そしてただ流されるだけの者に待っているのは悲劇。それぞれの人間模様が恐慌をリアルに再現していた。

中央銀行の通貨政策チーム長・ハンは、このままでは1週間で韓国経済は崩壊すると警告するが握りつぶされる。金融コンサルタントのユンはラジオ番組で庶民の窮状を知り、ファンドを立ち上げる。

陶器工場を営むガプスは百貨店からの代金を手形で受け取るが現金化できない。下請けへの支払期日が来てやむなく自宅マンションを売ろうとするが安値で買いたたかれる。一方で、手持ち資金をいち早く米ドルに交換したユンは不動産にも投資、短期間で数倍に膨らませる。ハンは己の主張の正しさを信じながらも無力感を募らせていく。ハンが直訴する政府首脳は無策無能無責任、仕立てのいいスーツに身を包み国民よりも己の立場を守ることに汲々とする財務次官の姿は役人の本性を衝いていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

IMFから突きつけられた屈辱的な条件を受け入れた韓国政府は抜本的な構造改革を迫られ市場に競争原理を導入、自由な経済に脱皮する。しかし、その先にあるのは格差社会。映画は彼らの20年後まで描いているが、ハンやユンは予想通りの人生を送っている反面、お人よしだったガプスが外国人出稼ぎ労働者から搾取する側になっていたのが印象的だった。歳月は人を変えるのだ。

監督  チェ・グクヒ
出演  キム・ヘス/ユ・アイン/ホ・ジュノ/チョ・ウジン /バンサン・カッセル
ナンバー  277
オススメ度  ★★★


↓公式サイト↓
http://kokka-hasan.com/