こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

クイック!!

otello2011-10-06

クイック!!

ポイント ★★*
監督 チョ・ボムグ
出演 イ・ミンギ/カン・イェウォン/キム・イングォン
ナンバー 221
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


自動車やトラックの間を縫うように超速で激走し、ビルの屋上から屋上を飛び移るバイク。そのめくるめくスピード感と浮遊感をリアルに再現するカメラワークについ引き込まれてしまう。一方でトンネルの壁を伝い、橋の上から電車に飛び移るなど曲芸走行まで披露する。犯罪に巻き込まれた不運を嘆く主人公、バイクと爆弾、さらに列車といったハリウッド映画のアイデアを借りながらも、素材を煮詰め危険を顧みないスタントとCGの完璧な融合は見事なエンタテインメントに昇華されていた。


伝説の元暴走族・キスはバイク便のライダーをしている。ある日、歌手の配達を頼まれるがそれは元カノのチュンシムだった。チュンシムが爆弾の仕掛けられたヘルメットをかぶってしまったため、キスは彼女をバイクに乗せたまま小包を配達する羽目になる。


謎の男からの指令で、30分以内に小包爆弾を届けなければヘルメットが爆発する。キスはフルスロットルでソウルの街を駆け抜ける。当然警察もキスと爆弾テロの関係をつかみ、キスはミョンシクという警官に追われながらも超絶的テクニックで切り抜ける。その間、映画は見知らぬ男に命をもてあそばれるキスの憤りよりも、むしろチュンシムとの関係に時間を割き、その上ミョンシクとの因縁まで持ち出して彼らの背景を描こうとする。このあたり、物語の息抜き的に使うのならば効果的だが、あまりに頻繁に挿入されるため説明的になり、せっかくのスリルに水を差している。


◆以下 結末に触れています◆


やがて事件の全貌が顔を見せ、すべては6年前に端を欲していたことが明らかになる。キスとチュンシム、ミョンシク、そして謎の男、彼らは忌まわしい過去によって導かれる運命だったという仕掛けはクールだった。ただ、かなりたくさんの無関係な人々がキスの暴走や爆弾テロの犠牲になっているのに、ドタバタ劇の味付けがなされているのには違和感を覚えた。笑いを取るなら血は流さない、死者を出すならシリアスに描くべきだろう、作り手の倫理観として。。。