こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ピラミッド 5000年の嘘

otello2011-12-14

ピラミッド 5000年の嘘
THE REVELATION OF THE PYRAMIDS

ポイント ★★*
監督 パトリス・プーヤール
出演
ナンバー 289
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


200万個の巨石を隙間なく完璧に調和のとれた形に積み上げる。それだけで現代文明をはるかにしのぐ高度な技術が必要なのに、そこに内包された長さには円周率と黄金数が偏在している。5000年もの昔、誰が、なぜ作ったのか、どんな目的に利用されたのか、記録も文献も一切現存しない。ゆえに現在“定説”とされているものはすべて検証がなされていない仮説にすぎない。作者はそういった“常識”に真っ向から疑問を投げかける。映画はピラミッド建造の手がかりを追って、扇情的な音楽と共に遠くイースター島からアンデスの遺跡群、メキシコのピラミッドへと旅を続ける。


大ピラミッドの「王墓として約20年の工期で建設された」説に対し、石鎚と青銅ののみで石を切り出し重機もなく運び上げるのは不可能と考える作者は、真実を求めて多数の専門家にインタビューして回る。


シャンポリオン以降のエジプト学者は王墓説に固執するあまり他の大発見を見て見ぬふりをする。作者は従来の考古学者や建築学者の驚きに満ちた見解だけでなく、ピラミッドの底辺や高さ、石室の寸法といった具体的な数字を物理学者や数学者に示し、まったく違う視点からメッセージを読み取ろうとする。そしてまたしても美しい数字の配列が導き出される。もはや超古代文明の存在は否定できない、だが作者は賛否双方の意見を交え、決して「トンデモ学会」風に走ることはない。


◆以下 結末に触れています◆


結局、これほどテクノロジーを持った文明も継承されず滅びてしまった。その事実は21世紀に生きる我々に、この繁栄もいつ終末を迎えるかわからないという警告。たとえばクラウドコンピューティングに頼りすぎ、あらゆる知識や記録をデータセンターに保存した場合、そこが想定外の災難に見舞われたときに人類の叡智は破壊され原始時代に戻ってしまう。だからどうしろといった解決策もないのだが。。。ただ一点、絶え間ないナレーションと膨大な情報量を整理し理解させるためにも、日本語吹き替え版を作ってほしかった。

追記:試写はすべて字幕版でしたが、日本語版もあります。

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