TIME/タイム IN TIME
オススメ度 ★★*
監督 アンドリュー・ニコル
出演 ジャスティン・ティンバーレイク/アマンダ・サイフリッド/キリアン・マーフィ/オリヴィア・ワイルド/マット・ボマー/アレックス・ペティファー
ナンバー 56
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
時間はカネ、そして命。富める者は永遠ともいえる時間を手にし、特権的・享楽的な生活を謳歌する。貧しき者は1日分生きながらえる時間を得るのに忙しく立ち働かなければならない。その上、制度を維持するために情報は統制され、搾取はより徹底される。映画は、科学の力で寿命が伸びた近未来、広がった社会格差の原因に気付いた青年が自らの解放と人生の意味を求めて闘う姿を描く。誰もがおかしいと思っているが、口にする者は消されてしまう不条理。一方で不老長寿の願いが叶った人々の苦悩。矛盾は怒りとなって主人公を突き動かす。
25歳で成長が止まるようになった人類は、時間を通貨として流通させていた。労働者階級のウィルは、ある日チンピラに絡まれているところを助けた男から100年を超える時間をもらった上に、現体制の真実を聞かされる。ウィルは支配層が住む街に潜入し、大富豪の娘・シルビアと出会う。
数百年・数千年永らえる人間は幸せなのか? 差し迫った危機がなければ人は無為に時間を過ごし、虚しさを覚え始める。ウィルに時間を譲った男も、“ただ生きているだけ”の毎日に絶望したのだろう。シルビアもまた贅沢で平穏な日常に意義は感じていない。また、その日暮らしのウィルたちもまた生まれてきた目的など考えたことはなかったはず。発明や進歩が逆に人々から希望を奪っている皮肉が、映像を支配する刹那的なトーンと相まって、死というタイムリミットこそが人間の愛や向上心を刺激してきた歴史を饒舌に物語る。
◆以下 結末に触れています◆
やがて時間取締官に追われる羽目になったウィルはシルビアをさらって逃亡する。富裕層に盗まれた時間を奪い返すウィルの行動にシルビアも同調、ふたりは“時間銀行強盗”を繰り返し、貧民層に分け与えていく。それはウィルにとっては不正との戦い、シルビアにとっては初めての激的な経験。命がけの逃避行は彼らの心を充足感で満たしていく。この作品はまさに現代社会の写し鏡、現在と将来に夢を持てなくなった若者が暴走するのも時間の問題、そんな警鐘を鳴らしているようだった。