こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム

otello2012-03-13

シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム
SHERLOCK HOLMES: A GAME OF SHADOWS

ポイント ★★*
監督 ガイ・リッチー
出演 ロバート・ダウニー・Jr/ジュード・ロウ/ジャレッド・ハリス/ノオミ・ラパス/スティーヴン・フライ/エディ・マーサン
ナンバー 62
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

見たこと聞いたことをすべて記憶にとどめ圧倒的な知力で分析する頭脳と、得られた情報から未来を予測し正確なシミュレーションで相手の動きを読んでしまう洞察力。格闘術にも優れ変装もお手の物、どんな苦境にも決してひるまずに強大な敵に立ち向かっていく。その上相棒とのウィットに富んだ掛け合いは、ある種の様式美すら感じさせる。そして、ユーモアとアクション、科学と魔術、現実とハイパーリアル、映画は主人公が知覚するそれらの相克をスローモーションと細部の動きまで再現したヴィヴィッドな映像で表現する。

世界各地で爆弾テロが多発、ロンドンでの犯行を未然に防いだホームズはモリアーティ教授が陰で糸を引いていると目星をつける。ホームズとワトソンはモリアーティの報復を受けるが間一髪脱出、事件のカギを握るジプシーの女占い師・シムとともにパリに渡る。

爆弾や大砲・機関銃といった大量殺傷兵器が従来の戦争を変えようとしていた19世紀末、世の中を混乱に陥れようとするモリアーティの陰謀を知ったホームズが彼に挑戦状をたたきつける。ホームズがモリアーティの巨大な組織と戦う様は007やMIシリーズのようで、殺し屋との対決から列車での銃撃戦、国境を越えた密入国など、一応、政府高官の兄からお墨付きをもらっているようだが、彼の活躍ぶりはスパイアクションのヒーローそのもの。次々と襲いかかる近代兵器で武装したモリアーティの部下たちを機転とアイデアで打ち破るシーンの連続には痛快感を覚えた。

◆以下 結末に触れています◆

やがて世界大戦を目論むモリアーティの真意に辿り着いたホームズたちは、ドイツの兵器工場、スイスの和平会議と舞台を変えて彼を追う。その際も、状況を詳細に検討して隠された真相を暴きだすだけでなく、むしろ肉体を駆使して解決していく。ただ、ホームズ兄弟やワトソンが見せる英国上流階級の感性がイマイチ理解できず、なかなか作品世界に入りこめなかった。せっかくジプシーという社会からはみ出して生きる人々に重要な役割を与えているのだから、彼らとの価値観の違いを通じてホームズたちのスノッブぶりを浮き彫りにしてほしかった。

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