こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

マヤの秘密

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口笛に脳が反応した。顔を見てもしやと思った。声を聴いて確信に至った。その男こそ自分と家族の仇であることを。物語は、第二次大戦後の米国、米国人と結婚して家庭を築いている女が、忌まわしい過去と対峙する姿を描く。男を拉致・監禁した彼女は夫とともに厳しい尋問で自白させようとする。男は頑として否定、別人であると主張する。一方で、彼女自身も夫に打ち明けていない過去がある。男と妻の間で板挟みになった夫は、どちらの言い分を信じるべきか悩む。その間も女は男の家族に接近し話を聞くが情報は断片的。もしかしたら自分は全く見当違いなことをしているのか。暴走した復讐心はもはや制御できない。確信は疑念に変わり、疑念がさらに憶測を呼ぶ。そんな、夫婦間に芽生えた不信感が増殖していく過程がスリリングだった。

夫・ルイスの協力でトーマスと名乗る男を地下室に拘禁しているマヤ。マヤはジプシーの出身で、大戦中ドイツ兵に襲われて凌辱をうけていた。トーマスはそのドイツ兵に顔も声もそっくりだった。

地方都市の平和な住宅街、マヤたちの行為は決してばれないようにしなければならない。幼い息子はなんとかごまかせても、近所にトーマスの悲鳴を聞かれてしまう。警官が来てもしらばっくれるしかない。このあたり、トーマスを吐かせようとするマヤ自身が大きな秘密を抱え、守り通すために嘘をつく矛盾。ならば、トーマスの嘘を、彼女は責められるのか。もはやだれもが秘密と嘘にまみれている。埋もれてしまった真実を知ろうとするのは時に自らに刃を向ける行為でもあると、マヤの迷走は教えてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ルイスはトーマスの書類を調べ、彼の自白の裏を取る。トーマスの妻・レイチェルが捜査願を出したことから、マヤは彼女に近づく。レイチェルもトーマスの過去をまったく知らないという。トーマスの正体は、疑えばどこまでも疑わしい。だが確証はない。重大な秘密は信頼できる誰かと共有する。そのほうが気は楽になると、マヤとルイスの笑顔は教えてくれる。

監督     ユバル・アドラー
出演     ノオミ・ラパス/ジョエル・キナマン/クリス・メッシーナ/エイミー・サイメッツ
ナンバー     223
オススメ度     ★★★*


↓公式サイト↓
https://maja-secret.com/