こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト

otello2014-05-22

パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト Paganini: The Devil's Violinist

監督 バーナード・ローズ
出演 デビッド・ギャレット/ジャレッド・ハリス/クリスチャン・マッケイ/ヘルムート・バーガー
ナンバー 78
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

繊細な指先が生み出す旋律は聴衆の胸をかきむしり、哀しみと恐怖、怒りと驚愕という感情を刺激する。ところが、演奏が終わった後に去来するのは大いなる歓喜と感謝。彼の超絶技巧を目の当たりにした者は例外なく“奇跡”を体験するからだ。利己的で破廉恥かつ放蕩の限りを尽くすバイオリニスト、映画はこの男の人生のターニングポイントとなった海外公演にスポットを当てる。数メートル先も見えないほど深く濃いスモッグに覆われた町で起きたスキャンダルはたちまちゴシップの大波となって彼を窮地に追い込んでいく。その先で待ち受けているのは冷酷な裏切りと孤独。悪魔に魂を売った代償として得た成功は儚い、それでも至高の芸術は人々の記憶に残り後世に伝えられる、それこそが天才なのだ。

敏腕マネージャー・ウルバーニに才能を見出されほどなく売れっ子になり、名声はヨーロッパ中に響き渡ったパガニーニ。英国の指揮者・ワトソンからロンドン公演の招聘を受けるが、前金をすべてギャンブルで使い果たしてしまう。

ウルバーニは強引にパガニーニをロンドンに連れ出すが、相変わらずパガニーニは練習もせず酒におぼれ、あまりの散財にワトソンの娘・シャーロットが厳しい意見を口にする。初めて出会った駆け引きも打算もない彼女の純粋さに惹かれていくパガニーニ。まるでわがままがどこまで通じるか試すガキのような一面を持つ彼が、わずかに人間的な気持ちを取り戻す。やがてコンサート本番の日、ステージに上がるまでハラハラさせる自己演出は彼が稀代のスターであったことを証明していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

だが、悪魔はあくまで悪魔であらねばならない。パガニーニのシャーロットへの愛はウルバーニを失望させる。挿絵のメフィストフェレスを思わせる風貌のウルバーニは“自分は従者に過ぎない”と言うが、パガニーニとウルバーニの関係は人間のダークサイドが“象徴としての悪魔”を操っている真実を語っていた。

オススメ度 ★★*

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