レンタネコ
オススメ度 ★★★
監督 荻上直子
出演 市川実日子/草村礼子/光石研/山田真歩/田中圭/小林克也
ナンバー 70
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
ゼリーの穴、靴下の穴、ドーナツの穴…。寂しさを穴に置き換えた人は、それを埋める代替物を探している。そんな時に現れる貸しネコ屋の不思議な女。人が求めるネコを期間限定で貸し出して孤独を癒してやる。映画はネコを通じて自分自身を見つめ直し、少しだけ前向きに生きようとする気持ちを取り戻していく人々を描く。「レンタ〜ネコネコ」の売り声のように悠然と流れる時間の中で、豊かな人生とは何かと問うているようだ。
平屋の一軒家で数匹のネコと暮らすサヨコは、昼間はリヤカーにネコを乗せて川べりの道でレンタネコ屋をしている。ある日、老婆にネコを貸してもらいたいと言われ、審査のために彼女のアパートに上がる。そこでサヨコは彼女の身の上話を聞かされる。
その後も中年男に頼まれ子ネコを託す。老婆と中年男に共通しているのは子供との断絶。小さい時はあれほどかわいかった息子や娘が、やがて自分を必要としなくなったばかりか邪険に扱う。楽しかった思い出と現実のギャップに落胆とあきらめを抱いたまま彼らはサヨコのネコを世話し、見返りを期待しないで面倒を見るのが真の愛であると学んでいくのだ。また、レンタカー屋の女とのやり取りは、テンポの良い掛けあいなのにどこか噛みあわず、それでもいつしか女が満たされない胸の内を吐露していく展開は心憎い優しさにあふれていた。
◆以下 結末に触れています◆
そして中学時代の同級生の登場によって、実はサヨコも人とのふれあいを望んでいたことが明らかになっていく。友達のいない中学生だったサヨコはおばあちゃんだけが唯一の理解者だったのだろう。そのおばあちゃんが死んで2年もたつのにいまだ心に埋められない穴を抱えている。他人の悩みに耳を傾けていたサヨコ、本当は彼女自身がいちばん寂しさを我慢していた皮肉に、思わずガンバレと声をかけたくなった。。。