こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

白雪姫と鏡の女王

otello2012-08-02

白雪姫と鏡の女王 MIRROR,MIRROR

オススメ度 ★★*
監督 ターセム・シン
出演 ジュリア・ロバーツ/リリー・コリンズ/アーミー・ハマー/ネイサン・レイン/ショーン・ビーン
ナンバー 173
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

胸に秘めた情熱があふれ出す濃厚な赤、権力を誇示するきらびやかな金色、強固な意志がほとばしる青、無垢な弱さをさらけ出す黄色etc. 登場人物の心情を象徴する鮮やかに彩られたコスチュームの数々は、それだけでまばゆいばかりの光沢を放つ。ゴージャスと洗練が表裏一体となったこの作品の衣装デザインにおいては、白を基調にしたドレスでさえヴィヴィッドな印象を受けるほど強烈、カラフルで心が浮き立つおとぎ話に命を吹き込んでいる。石岡瑛子が作り上げた世界観は、映画における衣装デザインがいかに重要かをあらためて認識させてくれた。

女王に父の王国を乗っ取られ軟禁されていた白雪姫は、18歳の誕生日に城を抜け出し、森の小人に逆さ吊りにされた王子と従者を助ける。女王の舞踏会で再会したふたりは、運命的なときめきを覚えていた。

短気で陰険、毒舌家で負けず嫌いの女王が、王子の気を引くために必死でアンチエイジングに励む姿が痛ましい。シワやシミ・たるみを取る魔法なんかない、あるのは日々のスキンケアという現実をコミカルに見せてくれる。一方の白雪姫は“雪のような白い肌と漆黒の髪”を持つ輝ける18歳、でも太くて濃い眉毛に野暮ったさを残している。とうが立ったオバハンが失われつつある美貌にしがみつく滑稽さと、怖いもの知らずの小娘の気の強さ、さらに望めば何でも手に入るがゆえに本当は何が欲しいのかわからない王子を絡ませ、人生の意味を見失いがちな21世紀の現代人を皮肉っているようだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

また、森の小人たちにアコーディオン状の竹馬を履かせたり、操り人形の刺客を送り込んだり、白雪姫に剣客修業をさせて戦わせたりと、視覚的なアイデアは盛りだくさん。しかし、物語へのアプローチが中途半端なため、微妙に寒い空気が充満する笑えないコメディになってしまったのが残念だった。どうせならジュリア・ロバーツを、「ここまでやる!?」と思わせるくらい弾けさせてほしかった。。。

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