こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

るろうに剣心

otello2012-09-05

るろうに剣心

監督 大友啓史
出演 佐藤健/武井咲/吉川晃司/蒼井優/青木崇高/綾野剛/須藤元気/田中偉登/奥田瑛二/江口洋介/香川照之
ナンバー 220
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

軽やかに宙を舞い、目にも止まらぬ速さで剣を抜き一撃を浴びせる。数十人もの敵を向こうに回し単身斬り込んでいくスピード、身をひねり頭をかがめ背を反らして攻撃をかわす反射神経と柔軟性は時代劇の殺陣に新しい風を吹き込んでいる。映画は、伝説の剣豪が地上げに苦しむ若い娘を助けたのを機に巨大な悪と闘わざる得なくなる苦悩を描く。もう人を殺さない、そう心に誓っていても人斬りの過去は付きまとう、それでも新たな出会いを経て、再び人の役に立とうと自らの未来を切り開いていく姿が痛快だ。いかなるピンチでも飄々とした表情を崩さない主人公を、佐藤健がさわやかな笑顔で演じる。

戊辰戦争時、“人斬り抜刀斎”と恐れられた緋村剣心は、10年後、流浪人となって東京に流れてくる。ある日、ニセ抜刀斎から剣術道場の娘・薫の命を救い、さらに薫の道場に嫌がらせに来たヤミ豪商・観柳の子分たちを追い払ったことがきっかけで、道場の居候になる。

武士の世の中が終わり、才覚があれば誰でものし上がれる。その時流に乗り損ねた元士族と、彼らを手下にするアヘン密造で巨利を得る成り上がり者の観柳の対比が鮮やか。いやらしいまでにカネと権力に固執する男を香川照之がけれん味たっぷりに表現し、現れるだけで場の空気を変える圧倒的な存在感を見せている。もはや剣術=殺人術は無用、彼らの腕は観柳のような悪党の私兵となる時のみ必要とされる、新時代に適応できなかった男たちのなれの果てが哀しい。剣心もまた彼らと同類、消えゆく運命にある剣客という人種が最後に己のプライドを賭けて死闘を繰り広げる様は、滅びの美学すら感じさせる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、物語の構成がやや雑で、とりあえず原作コミックの人気者を押し込んだ印象は否めない。その分アクションシーンが増えて目を楽しませてくれるが、この映画版のストーリーに必然性のないキャラクターまで登場させなくてもよかったのではないだろうか。。。

オススメ度 ★★*

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