こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

小野寺の弟・小野寺の姉

otello2014-10-28

小野寺の弟・小野寺の姉

監督 西田征史
出演 向井理/片桐はいり/山本美月/ムロツヨシ/麻生久美子/大森南朋/及川光博
ナンバー 251
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

都会の片隅で寄り添うように生きる姉と弟。いちばん気心の知れた存在でいちばん大切な人でもある。こんな生活が永遠に続くはずはなく、いつかは別の人生を歩まなければならないのはわかっている。だが、居心地のよさについ先延ばしにする。物語は、両親を亡くして以来ずっと2人で暮らしている姉弟に巡ってきた新たな出会いと顛末を追う。自分の未来を諦めて弟に幸せになってもらいたい姉、恋よりも姉を優先してしまう弟。お互いが負い目を感じ己を犠牲にする、そんなちぐはぐでぎこちない愛情がおかしくも愛おしい。心の中では号泣しているのに無理に笑顔を作る姉を恐ろしく複雑な表情で片桐はいりが怪演、プライドは高いが自己評価は低い中年女の情念を魁偉な容貌で迫力たっぷりに再現していた。

40歳になるより子は33歳の弟・進と小さな一軒家に住んでいる。ある日、進は誤配手紙を届けた先で出合った絵本作家の薫と再会し、香りについての相談を受ける。それを知ったより子は進と薫の関係を発展させようと画策する。

多少くたびれてはいるが仲の良い夫婦にも見えるより子と進。かつて恋人に二者択一を迫られた末フラれた経験のある進は薫に対しなかなか積極的になれない。一方のより子は中学時代に好きな男子と別れて以後、異性との接触は勤務先に来る営業マンのみ。恋愛偏差値が最低ランクの姉弟のもどかしいまでの不器用さがオーバーアクション気味に描かれる。ところが、欠けた前歯の真実が語られて以降は、より子と進の相手を慮る気持ちが彼ら自身を縛っていたことが明らかになる。他人が決して割り込めない固い絆が恋のチャンスを奪っている。その殻を破る勇気を持った時、2人の運命が動き出す。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

結局、進が探し求めていた「ありがとうの香り」はより子からしか漂ってこなかった。2人だけで完結した世界、これでいいのだろうか。やっぱりこれでいいのだ、彼らが納得しているならば。。。

オススメ度 ★★*

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