こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ワンナイト・ワンラブ One Night One Love 

otello2012-09-17

ワンナイト・ワンラブ YOU INSTEAD 

監督 デビッド・マッケンジー
出演 ルーク・トレダウェイ/ナタリア・テナ/マシュー・ベイントン/ルタ・ゲドミンタス、
ナンバー 225
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

夢を追っている彼女の胸の内は分かる、かつて自分もそうだったから。恋に落ちるチャンスには敏感、ラブソングを歌っているから。何より、どこか魂のレベルで共鳴し合っているような感覚が芽生えている、音楽を志した同志だから。映画はふとしたきっかけで、手錠で繋がれてしまった男と女が、ののしり合い反目しあいながらも徐々に気持ちを通わせていく姿を描く。音楽祭という非日常的な空間が醸し出す高揚した空気に心が解放され、素のままに戻った時、ふたりの関係は堅牢な手錠以上に分かち難くなっていく。そんな、人を優しく幸せな気分にさせる“音楽の魔法”をあらためて認識させられた。

スコットランドのロックフェスに出演する人気ユニットのボーカル・アダムは、ガールズバンドのキーボード・モレロと諍いを起こす。そこに見知らぬオッサンが仲介に入り、ふたりの手首に手錠をかけ、離れられないようにしたまま雑踏に消えてしまう。

鍵が見つからず、鎖を切ろうと奮闘するがまったく歯が立たない。各々の恋人たちにも誤解されたりする。やがてモレロたちのバンドが本番を迎えると仕方なくアダムは一緒にステージに上がり、モレロの演奏にちょっかいを出しはじめる。ところがアダムが彼女たちの曲を巧みにアレンジして、ふたりがいつしか絶妙のコラボを見せるあたり、ノリのいいリズムとメロディは心理的な壁を容易に壊してしまう力を持つことを教えてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

そして、離れられないまま遊園地で遊び、ベッドに入り、トイレで用をたすうちに、お互いの恋人たちへの不満、相手への思いやりなど、裸の感情をぶつけ合い、ふたりは精神的にも強く結ばれていく。その、一夜限りの偶然が運命の出会いに変わっていく過程は若き情熱がほとばしり、大勢のファンと共に思いのたけをシャウトするクライマックスは愛の奇跡を連想させる。なにより本物のロックフェス開催中に巨大なステージと数万の群衆をバックに撮影されたひとつの恋が生まれる瞬間は、アダムが口ずさむラブソングにも似たときめきと生きる喜びに満ちあふれていた。

オススメ度 ★★★*

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