リンカーン/秘密の書 Abraham Lincoln: Vampire Hunter
監督 ティムール・ベクマンベトフ
出演 ベンジャミン・ウォーカー/ドミニク・クーパー/アンソニー・マッキー/メアリー・エリザベス・ウィンステッド/ルーファス・シーウェル/マートン・ソーカス/ジミ・シンプソン
ナンバー 244
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
大木を一撃で粉砕する強力な斧を自在に操り、襲い掛かってくるヴァンパイアたちの首を刎ね額をたたき割り肉体を微塵に打ち砕く。そのスローモーションを多用した流麗で柔軟な体の使い方は様式美すら感じさせる。映画はエイブラハム・リンカーン米国大統領が若き頃、表の顔とは別にヴァンパイアハンターとして人知れず闘っていたという強引で突飛な発想を、壮大なバロック音楽のような映像に昇華する。もはやヴァンパイアは日光も十字架も恐れず、普通の市民に紛れて日常を送り、夜な夜な密かに人間の生き血をすする存在。数が増えると主流派に反発する者も現れるなど、まるで社会の縮図だ。
幼いころ奴隷商人のヴァンパイア・バーツに母を殺されたエイブは復讐を誓い、長じてバーツに挑むがあっさり返り討ちにあう。危ういところを謎の男・ヘンリーに救われ、ヴァンパイアの習性を知りつくした彼に弟子入りしてひたすらヴァンパイアハンターへの修練に励む。
ヴァンパイアを倒すための戦術を身に付けたエイブは雑貨店に勤めながらも勉学に勤しみ、夜はヘンリーからの命令でヴァンパイアを狩る二重生活を経て、いよいよ母の仇・バーツに挑む。暴走する馬群とともに疾走し、馬の背から背へ跳び移りながらの格闘は「マトリックス・リドーデッド」を彷彿させる躍動感に3Dの臨場感が加わる大スペクタクルだった。馬の質感がイマイチ雑なのが気になったが。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
やがて南部の黒人奴隷がヴァンパイアの餌にされているのを目の当たりにしたエイブは政治家に転身、奴隷解放を訴える。その後、大統領になり、奴隷解放宣言と共に南北戦争に突入、不死身のヴァンパイア兵を前線にさし向ける南軍に苦戦する。このあたりの荒唐無稽さは中国の伝奇小説風のバカバカしさだが、突きぬけた論理はむしろ爽快ですらある。どうせここまでやるのなら、劇場で暗殺されたはずのエイブが実は直前にヴァンパイアに噛まれて永遠の命を手に入れたいた、くらいのホラをかましてほしかった。。。
オススメ度 ★★*