ザ・ヴァンパイア A Girl Walks Home Alone at Night
監督 アナ・リリ・アミリプール
出演 シェイラ・ヴァンド/アラシュ・マランディ/マーシャル・マネシュ/モジャン・マーノ/ドミニク・レインズ
ナンバー 137
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
街灯、自動車のヘッドライト、工場の外照明、部屋の電灯……。夜を照らす人工の光は危ういほどの妖しさで闇とのコントラストを際立たせる。そこは、昼間は油田のポンプが忙しなく上下運動を繰り返し、血を吸われた死体が打ち捨てられた涸れ川が腐臭を漂わせている町、人々は太陽の恩恵よりも夜陰を好み、日没後に活発になる。物語は、発展から取り残された場所で退廃を見守る女ヴァンパイアの恋を描く。女をモノ扱いする男は許さない、ヴァンパイアは男たちに反省や命乞いの時間すら与えずに喉元に食らいつく。黒いベールを頭からかぶった長三角のシルエット、透き通る白い肌、相手の魂を見透かす大きな瞳。感情を抑制し悪人を制裁する姿はクールかつミステリアスだ。
父を麻薬中毒にした売人にクルマを差し押さえられたアラシュは、ヴァンパイアに噛み殺された売人を見つけ、カネとドラッグを盗む。後日、クラブでドラッグを捌いていると美しい少女と出会う。アラシュは彼女の正体を知らなかった。
人気のない道でまだ10歳にもならない男の子を襲おうとするヴァンパイア。何度も「お前は悪い子か」と尋ね、答えに窮しているとスケボーを奪って去る。一方で売春婦を搾取する売人やしつこく付きまとう客を殺し、アラシュには“私は罪深い女”と警告する。ヴァンパイアは価値のない人間だけを慎重に選んで食料にしてきたのだろう、しかしその行為は、少しは町を浄化させているとはいえ人殺しには変わりない。理性的でありたいと願っている、優しく接してくれるアラシュを好きになってしまった、だが自分が生きるためには誰かの命が必要。そんな、苦悩するヴァンパイアがユニークだった。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
やがて、父に預けた猫から、アラシュは少女が何者かを悟る。それでも、アラシュは彼女を離さない。強烈なライティングで影がより濃くなったモノクロの映像が、ふたりの切ない未来を暗示していた。
オススメ度 ★★★
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