こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

私の奴隷になりなさい

otello2012-11-08

私の奴隷になりなさい

監督 亀井亨
出演 壇蜜/真山明大/板尾創路
ナンバー 275
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

命じられるまま、されるがままに身をくねらせ、女は苦悶の中にも愉悦の表情を浮かべる。肉体にもたらされた痺れるような快感と精神的にすべて頼れる圧倒的な解放感。それは自分を受け入れてくれた上にやりたくてもできなかった行動の背中を押し、自身気付かなかった、いや気づかぬフリをしていた本性に目覚めさせ火をつけてくれた男への全身全霊の帰依。そんなヒロインを演じた壇蜜の絡みつくような弾力をもつボディと肌が非常に魅力的だ。困惑の中に期待をにじませ、切なさと危うさが同居する複雑な心理を、憂いを湛えた瞳で表現する。

出版社に転職した“僕”は、落ち着いた雰囲気の香奈という先輩に魅かれ何度もアプローチするが、そっけない態度。ところが、突然彼女からメールで“セックスしない”と誘われる。ふたりはホテルに入るが、香奈は彼にビデオで顔を撮ってくれと頼む。

香奈は先生と呼ばれる中年男の“奴隷”として言いつけを守っていただけで、“僕”に対する思いは微塵もない。“僕”とセックスするという命令を実行して先生の歓心を買おうとしているのだ。一見歪んでいる、だが全幅の信頼を置く人間に隷属する歓び。結果与えられるご褒美は、更なる羞恥をさらけ出せる安心感。誰にも打ち明けられなかった心の闇を先生は理解してくれる、その孤独を癒してもらったことで心身ともに委ねてしまう微妙で繊細な女心の深淵をのぞくような映像は、文学的な格調さえ備えていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて“僕”も香奈をめぐって先生に操られるようになる。香奈は先生と交わるとエクスタシーに達するのに、“僕”のときはマグロ状態。“僕”は惨めな敗北感に打ちひしがれ、これまでの自己中心的なセックスでは感動を得られないと思い知らされる。愛とは相手の立場になって物事を考える行為、香奈の“奴隷”となって奉仕する過程で“僕”も本当の性愛の味を覚えていくだろう。。。

オススメ度 ★★★

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