こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ヒンデンブルグ 第三帝国の陰謀

otello2013-01-18

ヒンデンブルグ 第三帝国の陰謀 Hindenburg

監督 フィリップ・カーデルバッハ
出演 マクシミリアン・ジモニシェック/ローレン・リー・スミス/グレタ・スカッキ
ナンバー 299
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

天を覆う威容を誇る飛行船が、後部から発火した炎にたちまち包まれていく。またたく間に巨大な火の玉となりゆっくり地上に落ちていく様は、大きさこそ力と思い上がった人間に対して神が鉄槌を下したかのような壮大なスケールだ。映画はヒンデンブルグ爆発の史実を元に、陰で米独の政府と実業家の思惑と極秘計画が渦巻いていたという仮説の下にさまざまなヒューマンドラマが描かれる。第二次世界大戦前夜、そのパワーバランスの渦中で踊らされる人々の愛は、哀しい最期を迎えるのが分かっているだけに余計に切ない。

ドイツ発米国行きの旅客飛行船・ヒンデンブルグに爆弾が仕掛けられたと知った設計士のマーテンは、米国人富豪の娘・ジェニファーを追って密かに乗船する。だが、ジェニファーの婚約者の死体が見つかってマーテンはゲシュタポに逮捕される。

ダイナマイトを見つけたマーテンはンデンブルグ船内の爆弾を探さんと奔走する羽目になる。誰が、何のために。ジェニファーの父とヒトラーの野望の点と点が一つの線に結ばれたとき、爆破は現実となっていく。広々としたラウンジと客室、窓から眺める下界の風景、優雅な空のホテルといったイメージとは裏腹に、乗組員たちとナチス党員せめぎ合い、何重にも張りめぐらされた陰謀など、舞台裏で繰り広げられる駆け引きとともにヒンデンブルグは破滅への舵を取る。方向舵に記されたカギ十字が不吉な未来を象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

シートベルトもないむき出しの椅子に座り操縦桿を握るマーテン。もろに受ける風圧が大空を自在に飛び回る自由を手に入れたマーテンの高揚感として実感できるスリリングなグライダー滑空シーンに思わず引き込まれる。一方でヒンデンブルグが飛ぶ空は鉛色に沈んだ雲に覆われ、マーテンたちが引き受けた苦悩の深さを物語る。結局、事故を生きのびたマーテンとジェニファーは結ばれるが、戦争が始まれば彼らの仲もまた引き裂かれる。それを知る者には、明るいエンディングも悲しく思えるだろう。。。

オススメ度 ★★*

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