こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ドラキュラ デメテル号最期の航海

犬や家畜が喉を齧られて死んでいる。いつの間にかネズミが1匹残らず消えている。夜になると得体のしれない何かが蠢いていることだけはわかる。乗組員の仕業ではない。物語は、19世紀末、黒海から英国に向かった貨物船で起きた悲劇を描く。ベテラン船乗りばかりの船に医学と天文学を収めたインテリ黒人が加わる。積み荷の中身はわからない。高額の報酬に船員の士気は高い。だが、穏やかな天気に恵まれた航海は、夜ごとの悪夢によって不安に包まれていく。昼なお暗い船倉、夜はランプの灯だけではほとんど何も見えない。そしてわずかな光に浮かび上がるのは、恐ろしい形相をした人型の怪物。貨物船という逃げ場のない空間で音もなく忍び寄りいきなり襲い掛かってくる、そんな魔物に対して屈強な船乗りたちが感じる恐怖がリアルに再現されていた。

出港して間もなく女の密航者が見つかったデメテル号。船医・クレメンスはその女・アナに輸血し命を救う。彼女は積み荷の中にドラキュラがいて、人間の血を求めてロンドンに目指していると話す。

ドラキュラは故郷のルーマニアではもはや餌となる人間は貪りつくし、人口も隠れ場所も多い大都市に移住するつもりというアナ。日中は姿を隠しているが真夜中になると活動を始める。犠牲者の頸動脈に噛みつき血を吸うが、殺さずにゾンビ化させる。一方で、アナの血を少しずつ吸うことで、アナを生かしたまま血の供給減にしている。迷路のような船内に神出鬼没の怪物が潜んでいる。論理と推理で対策を練り反撃するが、怪物はそれを凌駕する身体能力と狡猾さを備えている。そして仲間がひとりずつ狩られていく。その構成は「エイリアン」を思わせるスリルに満ちていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、おどろおどろしい音楽と共にショッキングなシーンに転換するという手あかのついた表現が目立ち、ドラキュラの造形にも新鮮さが乏しかった。当時の帆船がディテール豊かだっただけに、もっと洗練された怖がらせ方を期待したのだが。

監督     アンドレ・ウーブレダ
出演     コーリー・ホーキンズ/アシュリン・フランシオーシ/デビッド・ダストマルチャン/ハビエル・ボテット/リーアム・カニンガム/ウッディ・ノーマン
ナンバー     171
オススメ度     ★★*


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https://www.universalpictures.jp/micro/dracula-demeter