こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

探偵はBARにいる2 〜ススキノ大交差点〜

otello2013-04-11

探偵はBARにいる2 〜ススキノ大交差点〜

監督 橋本一
出演 大泉洋/松田龍平/尾野真千子/ゴリ/渡部篤郎/田口トモロヲ/松重豊
ナンバー 80
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

図らずも有名になってしまったせいで、封印していたはずの記憶がよみがえる。それは他人には絶対に知られてはならない秘密。優しさゆえに日陰の道を選んだオカマが殺されたとき、複雑に絡み合った二つの過去が残された人間に復讐する。物語は警察ですら手を引いた殺人事件を主人公が探るうちに、裏社会にうごめく政治家やヤクザを刺激したことから起きる騒動を追う。前作同様、探偵と相棒の軽妙な掛け合いに加え、謎が謎を呼ぶ重層的な構成とともに引き裂かれた家族の愛まで描きこみ、全編を覆うゆる〜い空気が奇妙な心地よさを誘う。

TVのマジック大会で優勝した札幌・ススキノのオカマ・マサコの死体が発見される。マサコと仲が良かった探偵は犯人を捜そうとするが街の顔見知りは非協力的、そんなとき売れっ子バイオリニストの弓子が正式に調査を依頼する。

マサコはかつて地元選出の国会議員の“恋人”で、議員陣営は発覚を恐れあらゆるところに圧力をかけている。ヤクザの他にも正体不明のマスク集団にまで狙われる羽目になった探偵は、何度も危険な目にあいながらもマサコの真実に近づいていく。その過程で大乱闘とカーチェイスが次々と繰り広げられるが、それらの場面はスピードやスリル・緊張感とはおよそ無縁、人を食ったような弛緩したこの作品の世界観をユーモアたっぷりに楽しませてくれる。頼りない相棒を演じる松田龍平が相変わらずとぼけた味わいを醸し出しつつ、一転して格闘シーンではキレのある動きで映像を引き締めていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

さらに室蘭でマサコの出自を洗った後、政治家に迫った探偵は、彼の口からマサコへの思いを聞き出す。だが、政治家には懐かしさはあっても殺す動機はない。しかも大勢の有権者の願いを背負い、もはや個人では動けないと訴え、政治家の公人としての苦悩を訴えるばかり。事件の真相は意外なほど単純なのに、誤解した周辺の人々が大騒ぎしただけというオチもスパイスが効いていた。何より生き別れたたった一人の肉親を見守る人の気持ちが切なく哀しく胸を打った。

オススメ度 ★★★

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