こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アンコール!!

otello2013-04-12

アンコール!! SONG FOR MARION

監督 ポール・アンドリュー・ウィリアムズ
出演 テレンス・スタンプ/ヴァネッサ・レッドグレイヴ/ジェマ・アータートン
ナンバー 82
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

身の周りで起きる出来事すべてが気に入らない。近所の子供も顔見知りもひとり息子もみなバカばかりで口を利こうとは思わない。“オレはお前らとは違う”といつも不機嫌な顔で人を寄せ付けない、そんな老人が唯一の理解者である妻を失ったのをきっかけに、もう一度世間との関係を築き直そうとする姿を追う。無礼で無口、合唱なんてやってられるかと感じていた彼が、思いのたけを歌い、仲間から認められ、息子と和解しようとする姿は、人生は何歳になってからでもやり直せることを訴える。孤独なんかじゃない、他人の言葉に耳を貸さず、心を開いて行動を起こさなかっただけなのだ。

高齢者コーラスグループの練習に通うマリオンの送迎をする夫のアーサー。ある日、グループがコンテストへの参加を決め、余命わずかと宣告されたマリオンが予選で最後の力を振り絞ってソロパートを歌う。

友人と楽しそうにしているマリオンがうらやましく思う時もあるのに、アーサーは素直になれず、つい悪態をついてしまう。自分の弱さを見抜かれるのが嫌で虚勢を張っているが、マリオンの死後、息子との間にも決定的な亀裂がはいる。人間関係がうまくいかないのはわが身の不徳なのはわかっている、だがそれを認め謝罪する勇気がない。幼稚なプライドにしがみつく典型的な頑固ジジイをテレンス・スタンプが終始苦虫をかみつぶした表情で好演していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて己にも家族と過ごした懐かしい記憶があると気づいたアーサーは、マリオンに代ってステージに立つのが彼女の遺志と知り、コーラスグループの門をたたく。すでに予選を通過し、本選に進出したグループは会場に向かう。その過程で、アーサーにもコーラスグループにもひと悶着あるが、無理やりハラハラさせるような演出をせず、やや強引ではあるがあくまで自然体で危機を乗り越えさせてしまう淡白さがかえって軽快なテンポを生み心地よかった。何より、人と人はいつか離れ離れになるけれど、愛し愛された思い出はいつまでも色褪せないとこの作品は教えてくれる。

オススメ度 ★★★

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