こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

建築学概論

otello2013-05-22

建築学概論

監督 イ・ヨンジュ
出演 オム・テウン/ハン・ガイン/スジ/イ・ジェフン/チョ・ジョンソク
ナンバー 121
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

忘却の彼方から突然現れた女、それはほろ苦い経験ゆえに長い間封印していた記憶。“好きだ”のひとことが言えなかったせいですれ違い、誤解がもとで結ばれなかった恋だ。物語は中年にさしかかった男と女が再会し、お互いの思いを胸に秘めたまま過去を振り返る姿を追う。彼女の気持ちがわからない男、彼の気持ちがわかっていながら素直になれない女。鈍感なのに繊細、敏感なのに気まぐれ、そんな恋に対する男と女のとらえ方の違いが鮮明に描かれる。ゆったりと時間が流れるふたりの現在には大人の分別を、まだスマホipodもなかった90年代の小物にノスタルジーを感じさせる。

建築家のスンミンのもとに大学時代の同級生・ソヨンが訪れ、自宅の改築を依頼する。ふたりはかつて同じ授業で仲良くなり、好意を抱きあっていたがあるきっかけで疎遠になっていた。

改築が終わるともう会えない、そう思うのか次々とスンミンの設計に難癖をつけ工期を長引かせようとするソヨン。破局の原因が自分にあるとわかっているのか、ネクタイを買ったりして謝罪のチャンスをうかがっている。一方のスンミンは結婚・渡米を目前に控え、ソヨンに興味が持てない。それでも昔話を蒸し返されるうちに、若い婚約者では味わえない純粋な感情がよみがえる。そして彼自身、フラれたことに納得していなかったと気づくのだ。もう一度あのころに戻れたらもっとうまくやれたのに、もっと相手の胸の内を考えてあげられたのに。後悔がふたりの心に浮かんでは消え、懐かしさと共に、失った愛の大きさに動揺を隠しきれない。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

再び気の置けない関になったふたりに、嫌いになって別れたわけではないという事実がゆさぶりをかける。昔は勇気がなかった、今は別の人生がある、現在の彼らの関係が思ったように進展しないのはふたりとも年老いた父や母を抱えているからでもある。みずみずしいままの初恋の思い出に、大人になるのは背負った荷が重くなることでもあると教えられた。

オススメ度 ★★★

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