こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

欲望のバージニア

otello2013-06-26

欲望のバージニア LAWLESS

監督 ジョン・ヒルコート
出演 シャイア・ラブーフ/トム・ハーディ/ゲイリー・オールドマン/ミア・ワシコウスカ/ジェシカ・チャステイン/ガイ・ピアース/デイン・デハーン/ノア・テイラー/ジェイソン・クラーク
ナンバー 105
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

山深い村で密造酒を作る3兄弟は、違法でも需要を満たし地元との結びつきを大切にする。都会から来た捜査官は、住民を搾取し逆らう者は容赦しない。法を破る者と弱みに付け込む悪徳役人。映画は無法地帯と化した田舎町での“戦争”を描く。頼りになるのは腕力と銃と機転だけ、禁酒法時代の米国においても、銃は力の象徴だったことを物語る。狡猾さと無骨さ、洗練されたファッションと泥臭い作業服、独断偏見と合議制、捜査官と3兄弟のあらゆるスタイルが対照的なのが興味深い。

バージニア州山間部で密造酒を製造販売するハワード、フォレスト、ジャックの3兄弟は、新任のレイクス捜査官の上納金要求を拒否し、フォレストが襲われる。そんなとき、ジャックはギャングのボスとの取引を成功させたうえ、フォレスト襲撃犯の居場所を知る。

売られたケンカは決して退かず、ナックルダスターをはめた拳で相手をぶちのめす。圧倒的な腕っ節の強さのみならず、脅しに屈しないタフな精神を持つフォレスト。喉を掻っ切られても“病院まで歩いた”という噂がさらに彼の虚像を拡大する。腐敗した公権力に敢然と立ち向かう彼の姿に、レイクスに従う保安官までが内心では共感している。その複雑な住民感情が、フォレストを伝説の男に仕立て上げる。まだほとんどのコミュニケーションが口コミだった田舎町、レイクスの言いなりになるしかなかった住民にとってフォレストたちは希望になっていく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

西部開拓は遠い昔、大恐慌で世界中が生活苦にあえいでいた1930年代に、舞台になった田舎町の人々は不況や貧困とは無縁に暮らしている。景気に左右されないどころか、禁止されているがゆえに利幅の大きい商売で、むしろ潤っていたようにも見える。もはや“現代”と呼んでもよい近過去に、“悪代官に対して一揆を起こす百姓”といった日本の時代劇風の構図があったとは驚きだった。。。

オススメ度 ★★★

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