こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

渇きと偽り

川は涸れ湖は干上がり森は緑を失い農地には土埃が舞いシャワーからは泥水が出る。1年近く雨が降らない小さな田舎町、旱魃はそこに住む人々の心からも潤いを奪っている。物語は、親友だった男の一家無理心中に直面した上、20年前についた嘘とも対峙しなければならなくなった捜査官の苦悩を追う。町には新人警官がただひとり、証拠に疑問を持っている。捜査に協力するうちに、親友とその家族が死ぬ理由につじつまが合わない部分を見つける。さらに関係者に事情聴取するうちに、意外な人物が浮かび上がる。だが、捜査官は封印された記憶と閉鎖的な人間関係に、次第にがんじがらめにされていく。豊かな水に恵まれていた高校時代と干からびてしまった現在が主人公の心象風景と重なる。その鮮やかな対比が、失われた青春と友情のはかなさを象徴していた。

妻子を射殺し自殺したルークの葬儀のため帰郷したアーロンは、元同級生・グレッチェンと再会、ルークを悼む。一方で、地元警官のレイコーはルークが使った銃弾の種類が違うと気づく。

アーロンはあくまでレイコーを手伝う立場で、捜査官としての権限は使えない。高校時代に女友達・エリーの死にかかわったことが知られているアーロンにとって地元は居心地が悪い。露骨に嫌悪感を示し妨害する者もいる。それでも、ルーク家の経済状態を調べるうちにアーロンの疑念は大きくなっていく。小さな手掛かりから一歩ずつ真相に近づいていく過程はスリリングかつミステリアス。地域社会で一度嘘つきと認定されたら二度と信用を取り戻せない、そんなアーロンのもどかしさがリアルに再現されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

レシートの裏に書かれた名詞や監視カメラの映像から容疑者を絞り込むアーロン。さらにグレッチェンのアルバムからも新事実を見つける。結果的にアーロンは町を救い事件を解決する。そして見つけたエリーの思い出。アーロンはさらに過去に向きあう勇気を絞り出す。真実こそが、図らずも死んだ人々の無念を慰めると、アーロンの眼差しは訴えていた。

監督     ロバート・コノリー
出演     エリック・バナ/ジュネビーブ・オライリー/キーア・オドネル/ジョン・ポルソン/ジョー・クローチェック/クロード・スコット=ミッチェル/サム・コーレット/ベベ・ベッテンコート
ナンバー     180
オススメ度     ★★★★*


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