目を見て念を送れば相手の意思を操れる父。手を触れなくても物体を動かすことができる母。そんな彼らの娘は、さらに恐ろしい能力を生まれながらに持っている。物語は、フラストレーションを感じると発火現象を起こす少女と彼女の父が、武装した政府系組織と戦う姿を描く。各地を転々として息をひそめるようにして生きてきた。だが、悪童に絡まれた少女が学校で発火したことから居場所がばれてしまう。捕まればラボに閉じ込められ研究材料にされる。自分たちは選んで異能力者になったが、娘は生まれつき。赤ちゃんの頃からミルクやおしめのたびにベビーベッド周りに火が付くという恐怖と戦ってきた両親の苦悩がリアルに再現されていた。娘を生け捕りにするために雇われた殺し屋の無慈悲な表情が、特殊能力を手に入れた者の悲哀を象徴していた。
田舎町で両親とひっそり暮らしていたチャーリーは、感情を抑制できず学校のトイレを燃やしてしまう。すぐに殺し屋が送り込まれ母が殺されるが、間一髪、父のアンディとともに難を逃れる。
追跡を避けるために一家はパソコン・スマホといった電子通信機器を一切使わないという設定。クルマも非常に古い型。デジタル化が進むほどアナログの方が見つかりにくいという皮肉が効いていた。逃避行中に拾ってくれた男のピックアップトラックも電子制御などない代物だ。情報社会に取り残されても特に不自由を感じずに生きている人々が米国の田園地帯にはまだまだいるのだろうか。それでも、アンディが指名手配されたことから、またしても警察と殺し屋に追いつかれてしまう。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
アンディが監禁されているラボを目指すチャーリーは、誰にも教えてもらっていないはずなのにサバイバル能力に目覚め、ラボに潜入。捜査官を脅したり、監視カメラをかいくぐってアンディの元に到達する。そもそもハイテクとも他人とも距離を置いていたのに、チャーリーはなぜかその盲点を知り、立ちはだかる大人たちの悪意を瞬時に見抜く。その、自律した成長能力こそ恐ろしかった。
監督 キース・トーマス
出演 ザック・エフロン/ライアン・キーラ・アームストロング/シドニー・レモン/カートウッド・スミス/ジョン・ビーズリー
ナンバー 115
オススメ度 ★★*